編集過程では、特に迷いの大きかったシーンもあったという。自死を試みた際に家族へ残したビデオレターや、病院で目覚めた直後に撮影していた映像など、当初は「入れたくなかった」と語る。しかし、記憶にないまま残されていたそれらの映像を見たとき、「死にたかったのではなく、生きて伝えたかったのだと感じた」と心境の変化を明かした。
また、捜査の過程で関わった捜査員Aとのやりとりについても触れ、「警察という一つの組織の中にも、さまざまな立場や葛藤がある。その複雑さを描きたかった」と述べ、本作が単純な善悪の構図ではなく、制度の狭間で起きる現実を捉えようとしていることを強調した。
約450時間に及んだ素材を一本の映画にまとめ上げた編集作業については、「約104分に絞り込む作業は本当に大変だった」と語り、編集を担当した山崎エマへの感謝を述べた。

舞台挨拶の最後に伊藤監督は、「この映画は本当に多くの人に支えられて完成した」としたうえで、「傍観せず、行動を選んでくれた“アクティブ・バイスタンダー”の存在があった。」と語りかけた。
「性暴力だけでなく、日常の中にある不条理や違和感など、誰もがそれぞれの“ブラックボックス”を抱えている。この映画をきっかけに、身の回りで感じていることを一言でも声に出したり、誰かと共有したりする機会が増えてほしい」と締め、観客一人ひとりに静かに問いを投げかける言葉で、舞台挨拶は締めくくられた。