この度、解禁となったのは、主人公・敬太(杉田雷麟)が幼いころに撮影した、弟・日向が失踪する瞬間を捉えたビデオテープの映像。父のビデオカメラを持ち出し山へと向かう敬太と、兄と遊びたい一心で後をついてきた弟の日向。テープを回しながら山を彷徨っていると、二人の前に廃墟が現れ、そこで、敬太が鬼になって日向とかくれんぼをすることになる。廃墟の廊下の奥にいた日向を見つけた敬太は「はい、みっけ!次は日向が鬼ね」と呼び掛けるが、言葉が届いていないのか、日向は“何か”に引き寄せられるようにスーッと前に歩き出す。敬太は妙な違和感を感じ、日向がいるはずの場所を探すが、そこに日向の姿がないー。次第に焦りだし呼吸が粗くなる敬太は「日向!」と叫びながら辺りを走って探し始めるー。

本編ではこの映像の通りビデオテープが巧みに使われており、ビデオテープに残るノイズや画質の粗さ、ブレが観客へ与える不気味さを増長させている。近藤監督が本作の特徴を“ノーCG”“ノー特殊メイク”“ノージャンプスケア”と謳っているように、この映像のノイズはCGを駆使したのではなく、実際のビデオテープのノイズがそのまま使用されている。近藤監督の友人が持っていたビデオテープの一番ノイズが現れる箇所に今回の映像を録画し、それを取り込む。古いビデオテープは物理的に劣化しているため、映像や音声が特殊な状態で再生され、他にはない質感で映像化することができており、アナログな手法で本作の肝となる失踪する瞬間が映ったビデオテープシーンが完成している。

さらに、J ホラーの代表作の一つである『リング』のように、“ビデオテープ”というだけで、何かの恐怖が待ち構えているのではという不安感を煽る効果も果たしている。そして、“ノージャンプスケア”にもかかわらず、脳内にへばりつく恐怖が体験できるのは、近藤監督が“目に見えないものへの恐怖は人間の本能に根付いている”ということ軸にして、丁寧に制作しているからである。本作のビデオテープの映像を見ていると、その時間息が止まり、静かな恐怖が襲ってくる感覚を存分に楽しめるはず。「いろいろ試しながらやったので学ぶことが多かったです」と笑顔で振り返る監督は、ビデオテープというアイテムで、Jホラーの醍醐味を存在に取り入れながら今までにない新たなステージのJホラーを創り出すことに成功している。

本編映像はこちら https://www.youtube.com/watch?v=GQKGbWUZknY

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