梨(作家)

恐怖や不快とは少し異なる、圧倒的な「異質」がそこにはあった。
「私は、ちゃんと帰れるのだろうか」
鑑賞後、そんなことを考えながら映画館を出る私の足取りが
やけに重かったのを、鮮明に覚えている。

南波志帆(アーティスト)

夜の山に足を踏み入れた時に感じたことのある、人間や動物以外の「何か」がいる気配。
その空間自体がしっとりとした特有の湿度と深く濃い香りを持っていて、まるで生と死の狭間にいるような、ある意味では神秘的で、だけども言葉では言い表せない畏怖の念を抱いてしまう、そんな感覚と鳥肌を強烈に思い出しまし
た。
何気ない日常に、大きく口を開けているあちら側の世界。実は、境目は案外曖昧なのかもしれない。
終始静かなトーンで丁寧に紡がれる物語だからこそ、じわりじわりと沁みてくる恐怖と没入感が凄かったです。

人間食べ食べカエル(人喰いツイッタラー)

直接的なホラー演出は行わない。霊すらもほぼ出ない。こちらの想像を極限まで掻き立てさせ、映像だけでは辿り着けない恐怖を味わわせる。リアルなビデオ映像や異様に淡々とした語り口は、まるで実話怪談のよう。日本らしいホラーに立ち返りつつ、そのイメージを更新する作品が誕生した。

野水伊織(映画感想屋声優)

幽霊だとかヒトコワだとか、名前を付け定義することで安心しようとする我々を嘲笑うかのごとく、“わからない”
恐怖が充満している。
そこかしこにちらばる違和が結びつき、それが確信に変わる“ある台詞”を聞いた瞬間には本当に背筋が冷え切っ
た。
はたと気がついたら、私もあの山にいるのかもしれないとすら思える。
これはもう、観る怪談だ。

1 2 3 4

5

6 7

RELATED

PAGE TOP