次に、キャスティングについて聞かれた監督は、「黒澤さんが言っていたのですが、映画で大事なことは脚本とキャスティング。キャスティングについては自信があります。」と自信を覗かせる監督。主人公の笠原良策を演じた松坂に対しては、「松坂さんは非常に素直で、この人物だったら主人公をきちんと掴んでくれると思った。」と、良策の妻・千穂を演じた芳根については、「俳優さんはそのセリフをどう捉えるかが大事なのですが、聞いている表情も非常に大事。芳根さんはその聞く表情がとてもよかったので、芳根さんにオファーをしました。」と、抜擢理由を明かした。さらに、日野役の役所については、「お豆腐の“にがり”みたいなもので、この人がいてくれたことで映画がキュッと締まる。なかなか日本の俳優さんで役所さんみたいな人はいないので、ご一緒できただけでよかった。」と役所への尊敬の眼差しを見せた。

2023年10~12月にかけて行われた本作の撮影。撮影を振り返って大変だったことを聞かれた監督は、「ないですね。」ときっぱり。先月の1月に亡くなった撮影カメラマンの上田正治とは影武者(1980)の撮影から一緒だったというが、一度も喧嘩や言い合いはしたことがなかったそう。監督は、「カメラマンは監督以上に監督の身になるポジション。そこに素直に来てくれて、僕の目以上にビジョンを広げてくれる。頼りがいがある女房です。」と上田氏との思い出を語る。さらに、劇中で印象的だった雪山撮影について聞かれた監督は、「スタッフがあらゆることを想定して準備してくれたので、僕が気を遣うことはなかったです。」と黒澤組からの信頼するスタッフに感謝の気持ちを伝えた。本作の題材となる疱瘡(天然痘)をどう見せるか苦労したかと問われた監督。それに対し、「コロナ禍もあって助かった部分もありますが、醜いものを見せたいという思いはなかった。」と醜い部分を見せなくてもこの作品は成り立つと思っていたと話す。

1 2

3

4 5

RELATED

PAGE TOP