そして、この度アカデミー賞(R)主演男優賞にもノミネートされている、本作の主演ティモシー・シャラメに話が及び、「彼と一緒にこの作品を作ると決めたのが2019年でした。最初に彼に伝えた言葉は、“ギターを買ってください”でしたね。それから6年が経ちましたが、彼がこの役にどれだけの情熱を注いできたかは、映画を見ていただければ一目瞭然だと思います。」と、絶賛する。ティモシーがどのように役と向き合っていたかを聞くと、「彼はコロナ禍や他作品の撮影を挟みながらも、ずっとボブ・ディランをどう演じるか、どう理解するかを探求し続けていました。このような伝説的な人物を演じる上で最も重要なのは、音楽がその人物の一部であるということ。ボブ・ディランは音楽そのものでもある。だからこそ、ティモシーが本物の音楽性を持ち、演じるのではなく“彼自身がディランになる”ことが必要でした。その点で、彼は完全にこの役を自分のものにしていました。」と太鼓判を押す。その確信を持った瞬間については、「特に印象的だったのが、映画冒頭の歌のシーンです。クランクインして最初の1週間で撮影したのですが、実際にライブの場で彼が歌い上げる姿を見て、“これは特別な作品になる”と確信しました。彼の演技が、ただの再現ではなく、本当にその空間を満たし、広がりを生み出していたんです。俳優が作品の世界を完全に支配する瞬間を見ると、監督としてほっとするものです。」

最後に、劇場の観客に向けてメッセージをお願いすると、「日本に来られて本当に嬉しいです。こうして皆さんにいち早く本作をお届けできることを、心から嬉しく思っています。ただ、映画を見る前にあまり長々と話すのは無粋でしょう。シェフが料理を振る舞う前にあれこれ説明しすぎるのと同じですからね(笑)。とにかく、まずは映画を味わってください!」と、冗談を交えながらも日本公開に向けた喜びに溢れた笑顔で会場後にしました。

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