登⼭Pは、2019年4⽉に⽇本の⼥性学の第⼀⼈者である上野千鶴⼦先⽣が東⼤の⼊学式の祝辞で、東⼤でも東⼤⼥⼦が⼊れないサークルがあると⾔って話題になり、奇しくも、世の興味が原作の内容に追いついてきたと感じたそう。児⽟は、エマ・ワトソンの2014年の国連の「HeForShe」のスピーチを紹介。「私がこのスピーチで最も感動したのは、フェミニズムというのは、⼥性だけのものでもないし、フェミニストというのは⼥性だけがなるものではない中で、『ジェンダーの平等を願う気持ちがあれば、誰でもすでに無意識的にフェミニストなんだ』と話したこと。恐らく今の時代、ジェンダー平等を願っている⼈は多いはずで、私たちの社会は潜在的にはフェミニストが多いはず。私たちみんながカジュアルにフェミニストを名乗ったり、フェミニズムについて語っていけば、もっとフェミニズムやフェミニストのイメージが多様化すると思うので、あまり⾔葉に⾝構えずに、語っていってほしい」とアドバイスした。
劇中で⼭⽥杏奈演じる⿇⾐⼦が体現する”ルッキズム”に関する問題について児⽟は、「”ルッキズム”は”外⾒⾄上主義”と訳されていますが、⾃分が知らなくても勝⼿に巻き込まれている。⼤事なシーンだと思うので、映画を観る時はぜひそのシーンにも注⽬していただければ」と話した。
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児⽟は、”シスターフッド”という⾔葉に関しては、「今⾃分たちが置かれている、男性中⼼的な社会や、家⽗⻑制社会に対して⾃覚的であることを前提に、⼥性同⼠で連帯していくという姿勢が下地になっている概念」と説明。「本作を観た時に、例えば⿇⾐⼦とカナコは恋のライバル関係でもあるわけですけれど、本来ならば男性をめぐって対⽴しそうな⼥性同⼠が、対⽴ではなく、⼿を取り合っていくというのは、⾮常に”シスターフッド”的だと思った。⼥性同⼠というのは、”キャットファイト”という⾔葉があるように、男性中⼼的な社会の中で、対⽴させられやすい。その⽅が男性中⼼社会には都合がいいから。そうじゃなくて、彼⼥たちが連帯なり、共に助け合っていくというのは、”シスターフッド”なのではないかと思う」と解説した。
原作では、⾹夏⼦と亜依⼦がナンパされそうになった時に⾹夏⼦が、「私達、⼆⼈とも死ぬ気で就活してきたんです」と⾔って、男性⼆⼈を追っ払って⼆⼈が仲良くなるという場⾯がある。登⼭Pによると、映画版では亜依⼦を30代にしたため、同じセリフにはできず、カナコが、亜依⼦にセクハラ・パワハラをしてくる⼤御所の作家から亜依⼦を守るというシーンを脚本の知 愛に書いてもらったが、予算などの関係でカットになったそうで、「セクハラ・パワハラから同じ⼥性を守るシーンを提⽰できていたら、フジテレビ問題で揺れる今の⽇本に、どんなに救いになったのかなと思う」と残念がった。
本作『早⼄⼥カナコの場合は』に登場する⼤学1年⽣の⿇⾐⼦は、”男性にモテる服や仕草”などを真似していて、⼤学4年⽣のカナコは、⾃意識過剰で⼈がどう思うかを気にしすぎていて、30代の亜依⼦は、結婚は早い⽅がいいという世間体や⾃分⾃⾝の計画性に縛られていて、⾃分らしさや⾃分の本当の気持ちや現実が⾒えなくなってしまっていて、⽣きづらさを抱えている。児⽟は、中川⼤志が演じる⻑津⽥の⽣きづらさも描かれていることに着⽬し、「例えば、カナコとペアリングを買う時に、⻑津⽥は、⾃分が買わなくちゃいけないと思っていて、結局カナコに買われたことに怒る。”男性が買うべき”という刷り込みみたいなものが⻑津⽥の中にある。⼥性の⽅が、⼥性というジェンダーを意識させられる局⾯が多いので、そういう意味でジェンダー規範に気付きやすいけれど、男性はそういう局⾯は⼥性に⽐べて少ないので、『男らしくいなきゃ』だとか、『弱さを⾒せてはいけない』だとか、⾃分⾃⾝がジェンダー規範に従って⽣きている可能性になかなか気づけないことも多い。本作は、⻑津⽥が映画の中で徐々に、そういったものに縛られていたなと気づいていくという話になっている」と解説した。登⼭Pは、「フェミニズムを体現している『バービー』という映画が話題になったけれど、それを観た時に、10年以上前に書いた⼩説で、柚⽊さんは男性側の⽣きづらさも書いていてすごいと改めて思った」と話した。
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最後に登⼭Pは、映画にとって⼝コミがどれだけ重要かを説き、「⾯⽩い映画を観たら、感想を書くのは難しかったとしても、『⾯⽩かった』『オススメ』だけでもいいから、SNSにアップして欲しい」とメッセージを送った。