この度、公開記念トークイベントが2月12日に都内で開催され、上映後にはフリーアナウンサーで文筆家の住吉美紀をゲストに迎え、アーティストで映画批評家でもあるヴィヴィアン佐藤が司会を務める形でトークイベントが開催された。

ニューヨークのブルックリンを舞台に、心の傷を抱えながらソーシャルワーカーとして暮らすシングルマザーのシルヴィア(ジェシカ・ジャステイン)と若年性認知症による記憶障害を抱えるソール(ピーター・サースガード)という、“記憶”に翻弄されながら生きる男女の姿を描くヒューマンドラマだが、住吉さんは「すごく良い作品でした。テーマとか内容に“入り込む”という点でも素敵でしたし、映画好きの視点でも演出や脚本、カメラワークなど素晴らしかったです」と絶賛する。

ヴィヴィアンさんは、本作で描かれている様々な事象や日々のちょっとした出来事が「みんなが思い当たる話」であると語り、住吉さんもこの言葉に「2人ともトラウマになるような経験をして、人生の大変なことを背負い込んでいるんだけど、(観る者が)いろんなところで共感できるポイントが作られていて、2人の気持ちに入り込めるんですよね」と深く同意する。

住吉さんは、同じ女性としてシルヴィアに共感する一方、若年性認知症を抱えるソールについても「自分がそういう状況でなくても想像して共感してしまいました。夜中にトイレに行って、戻ろうとして、自分の部屋がどっちかわからなくなるシーンがありましたが、本当に切なくて…。もし娘の部屋を開けたら怖がられるとか、彼の中でいろんなことを考えて廊下に座り尽くしているのかと思うと、自分にその経験がなくても、本当に一瞬一瞬が大変な日々を生きているのが感じられました。そういう“入口”のつくり方が素晴らしいなと思いました」としみじみと語る。

ヴィヴィアンさんは、シルヴィアとソールだけでなく、彼らを取り巻く人々の感情の描写についても触れ「家族を含め、それぞれの視点が描かれていて、“周囲の人”と言えない――周りの人間が脇役かと言うとそうじゃなくて、描き方が絶妙!」と語り、住吉さんも「全ての人物描写がこまやかで『こういう経験をするとこうなるんだよなぁ…』と想像させてくれる描き方をしている」とうなずき「(上映時間103分で)2時間を超えるような長い映画じゃないけど、奥行きがすごいので、観終わった後に、いろんな視点でもう一回、考えて味わいたくなるし、誰かと一緒に見ると『あれ、どう思う?』とか『あれを思い出した』と話がしたくなる」と重層的な映画のつくりにも称賛を送る。

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