映画の中で、プロコル・ハルムの名曲「青い影(原題:A Whiter Shade of Pale)が印象的に流れるが、ヴィヴィアンさんは「すごく印象的だし、この映画にぴったり。60年代の曲だけど、どこか郷愁があり、神話的で懐かしさを感じさせる」と指摘。住吉さんも「音楽って、理屈を超えて、心に直で入ってくる。映画の原題は『MEMORY』で“記憶”ですけど、音楽ってまさに記憶と結びついているもので、時を超えてそこに連れていってくれる力がある。“記憶”というタイトルの映画の重要なポイントとしてこの曲を据えるって、まさしく! という感じがします」と語る。

さらに住吉さんは、主人公2人を捉えるカメラワークの巧みさについても言及。「(カメラが)常に距離を置いて2人を捉えているんですね。彼らは社会と距離を取って生きていて、距離を取らざるを得ない寂しさ、警戒心もあって、その距離が(カメラワークに)表れていると思います。それ以上、周りが近づけない2人であることを、観客に訴えてくるし、(観客は)少し離れた距離のあるところから見ているからこそ、2人がグッとつながった時の絆がすごく強く感じられると思います」と熱く語り、映画というメディアならではの2人の心の距離、社会との距離の描き方を絶賛する。

本作の脚本も手掛けているミシェル・フランコ監督による、映画的な描写の絶妙さに関しては、ヴィヴィアンさんも2人の出会いの同窓会のシーンについて言及。「お酒の飲めないシルヴィアが『早く帰りたい』という感じなんですけど、そこに(ソールが)ずっとチラチラと映ってるんです。なんか(シルヴィアを)見ている人がいるな…と思ったら、近づいてくる、それを1カットで撮ってるんです」と見過ごされがちな、巧みな描写を讃える。

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