そもそも、この2人がどうして互いに惹かれ合うようになったのか? 映画の中ではきちんとした言葉で説明されないが、住吉さんは「細かい説明をしないで、余白を残してくれる面白さがある」と語り、シルヴィアとソールについて「“傷がある”というのはしんどいことだけど、傷がある者同士だからこそつながることができる時があって、傷があるからこそ、心のひだの隙間に入れたんだと思うし、他の人じゃダメだったんだと思う。傷ついたり、哀しさを抱えている同志だからこその絆があり、2人はそれを嗅ぎ取ったんだと思います」と指摘し、ヴィヴィアンさんも「記憶を失くしていくソールと、忘れたい記憶があるシルヴィア――ネガとポジのジグソーパズルのようなポテンシャルがあった」とうなずく。

そんな2人が抱える“傷”を通して、観る者に様々なものを訴えかける本作。住吉さんは「この映画を観て、自分の傷について考えるという方もいると思います。いまの日本は本当に生きづらい時代だと思うし、ニュースを見るだけで傷つくことも多い。そういう意味で、誰もが傷を持っているけど、その最たる人たちが(映画の中で)癒しを見つける。そこに希望を置いてくれたミシェル・フランコ監督に『ありがとうございます』という気持ちになるし、(映画の結末で描かれる)(映画の結末で描かれる)ああいう希望の置き方が、すごくリアルでした。理解者がいて、人と心がつながることでこれだけ救われ、希望を持って前を向いて歩いて行けると示し、私たちをも救ってくれていると感じます」と生きづらさを抱えて生きる現代の人々の光明となる映画だと訴えた。

そして、改めて主人公2人を演じたジェシカ・チャステインとピーター・サースガードの熱演について、住吉さんは「全てがリアルでした。この2人のような実力派がやらないと、上滑りして、説得力に欠けてしまう作品だったと思います。シルヴィアとソールは本当にブルックリンにいるかも…と思わせるリアルさがすごかったです」と2人が物語にもたらした説得力に感嘆し「本当に何度も味わいたくなる作品でした」と惜しみない称賛の言葉を口にしていた。

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