若者のアートを信じる力に心動かされたという観客から、横浜監督自身にとって「アート」とはなにかという質問が挙がると、「私自身も映画を作っている立場として、そして芸術を受け取る立場として申し上げますと、やはり学校で教えてくれないことを知ることができると思っています。学校で教えてくれることだけだと人生で困ることっていっぱいありまして。私たちは、どうすればいいんだろうという、さっぱり答えがわからない局面にいつも立ち向かわなければいけないわけですが、そんな時に、自分が読んだ本、観た映画や絵画とか、人の思想とか、そういうものを思い出して、自分がもっと生き続けてもいいんだ、まだまだ生きていけるっていう、勇気をもらえる。自分にとってアートはそういう存在です。この映画の中でも主役の奏介にとって芸術というものがそんな存在でずっとあり続けてほしいと思っています」と思いを語った。また、本作の制作に対してのモチベーションについて尋ねられると、「原作は何話もの沢山の話で構成されてる漫画なんです。登場人物も多く、誰が誰だかわからないくらいいろいろな人が出てくるんです。そんな混沌とした原作の世界観の中で、主人公はいますが、沢山の人間たちの物語として面白く描けるんじゃないかなと思いました。とにかく沢山の人がこの場所を行ったり来たりする。その中に人間ドラマが微かに見えるような群像劇を目指しました」と話す。また、いくつかのエピソードが代わる代わる描かれることについて質問が及ぶと、「1人1人の物語の全てを描ききらないこと、一部だけしか描かないことで、その人たちの生き様をちゃんと想像して欲しいなという思いで、あえて余白を残しています」とこだわりを明かした。

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