公開に先駆けて、先行試写イベントが2月19日、日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホールで行われ、現代韓国を専門に研究している聖学院大学政治経済学部教授の春木育美、モデレーターとしてWill Labの小安美和が登壇し、トークイベントを開催した。
まず、映画の感想を聞かれた春木さんは、「本作の原作である『韓国が嫌いで』は、2015年の発売当時韓国ですごく話題になった本です。今回の日本での公開まで約10年、とても楽しみにしていました。韓国の今の若者が抱く閉塞感、不安、苛立ち、映画のなかで韓国の構造的な問題がちりばめられている作品で、そこが興味深かったと思います」と答えた。
本作は、主演のコ・アソンが主人公の28歳ケナを演じる。地獄のような長時間通勤、恋人との不透明な未来、仲が良いけれど息が詰まるような家族との日々のなかで、“ここでは幸せになれないと”感じたケナは新しい人生を始めるため、すべてを手放し、ニュージーランドへ旅立つ。

なぜ、ケナは生まれ育った国をでて、ニュージーランドへ向かったのかという話になり、春木さんは日本人が想像する以上に韓国が階層社会であることを解説。「原作の発売当時、『ヘル・朝鮮』『スプーン階級論」という言葉が話題になっていました。韓国は非常に階層社会で、身分が固定化している社会ではないかと若者が訴えていたのです。親の階層によって、進学、就学、結婚が思ったようにできない。生まれながらに、金のスプーン、泥のスプーンを持ってきた、などの表現がありました。ケナは韓国人から見たら恵まれていると思います。貯金が300万あり、奨学金も返済している。そして、大企業に勤めている。しかし、ケナの家族は貧しい、労働者階級です。ケナが、大学時代から長く付き合っている裕福な家庭出身の恋人の家族と食事をするシーンで、互いの家族の階層が違うとことを感じさせる描写が会話の中で続いています。そして、ケナが結婚してもずっと序列をつけられていくことを感じさせます」。