<酒井善三(映画監督) コメント>
前回の小嶋作品に引き続き、ある制度やルールの特異さをベースに敷き、会話劇を作るというスタイルだ。そしてそれが、ずば抜けて洗練されている。
今回そのベースになる制度は「失踪して7年経たないと死亡者として保険金がおりない」というものだ。
たったそこから…と誰しも思うだろう。しかし、その一見なんてことはない透明な「ガソリン」に、それぞれの人物の立場という「エンジン」を見事に配置してみせて、あっという間に小嶋流ドラマのドライブが始まっている。
突飛な映像的無茶や個性に走るのでもなく、律儀な文体でもって、一見ミニマルでありながら、ルールの些細な一点から、よくぞここまでサスペンスの展開が作れるなと仰天する。
その才能が羨ましい。
<末吉ノブ(映像監督/映画監督/Sprocket Holes Japan 代表) コメント>
MV という映像世界で長きにわたり監督として共に生きてきた戦友、小嶋貴之氏がついに劇場公開デビュー。
小嶋監督特有の客観的でシニカルな目線が、人間の怖さとコミカルさをあぶりだしてます。サスペンスだけどなんかコミカル。小嶋さんらしいなーと!
監督として普段から俳優と向き合う姿勢が、ちゃんと演技と演出に落ちてるのもとてもいいです。
これからもお互いに作り続けましょう!
<野辺ハヤト(アニメーション作家、graphic デザイナー) コメント>
ボタンのかけ違いの連続が、ほつれた糸が、まるで人間の本質を映し出すように、最後まで解けず走り抜ける。客観性が担保されるブラックコメディでありながら、その群像劇は男女の温度差と冷静な眼差しに翻弄され、小嶋監督の内なるフェイクとリアルのトリックにまんまと乗せられてしまった。
本人はビジュアリストではないと言うのだが、所々に差し込まれる視点には、その培ってきたDNA から溢れる、ビジュアル視点での映像の優れたエッジが読み取れる。それが映画全体の軸を鮮やかに緩やかにまとめて色をつけている気がするのは僕だけだろうか。
故に劇場の大きなスクリーンで見れることが今から待ち遠しい!