この度、主人公の居場所であるミニシアターの支配人・井澤雄一郎役の津田寛治のオフィシャルインタビューが届いた。

ー 本作出演の経緯をお教えください。
僕は福井駅前短編映画祭の審査員長をやっているんですが、10年続いているその映画祭に岡本監督は応募し続けてくださっているんです。岡本監督の作品には、見たことがないような俳優さんが出ていて、短編でもミュージシャンの演奏がフルで入っていて、キラキラ輝いているので、2018年は短編映画『ロック未遂』に主演女優賞(本作にも出演しているぺつさん)を授与したんです。ずっと見ていくうちに、この人はミュージシャンとしてやっているけれど、映画監督にもなりたいのかなと思い始めて。映画監督としてやっていくにしては、違うテイストの方向に進化していっているな、今まで見たことがないような進化のされ方をしているなと思っていました。ある時送ってきた作品(2022年の『君の僕の詩』)が、ミュージシャンの映画でもないような普通の映画でもないようなとんでもない映画で。ただ一つ言えるのは、やっぱり出ている人が輝いているんですよね。「この監督はいい監督なんだろうな」と思って、その時もまた主演女優賞(田中珠里さんと本作にも出演しているぽてさらちゃん。)を授与したんです。その時「長編を撮りたいので、出てもらえませんか?」と言われたという感じです。
ー シネコンとは一線を画すこだわりのラインアップのミニシアターだからこその経営不信も描かれていますが、ミニシアターの支配人役のオファーが来ていかがでしたか?
嬉しかったです。『THEATER』っていう短編映画で、目黒シネマをお借りして、コロナ禍に喘ぐ支配人という役もやったことがあったんですけれど、(本作の舞台の大阪の)第七藝術劇場はすごく好きな劇場でもあったので、ナナゲイのラインアップが浮かんできました。それを選ぶ支配人は、金儲けというよりも、映画界のことをしっかり考えながら、自分の腑に落ちるラインアップをする支配人だろうなというイメージの元やれたのが嬉しかったです。
ー 津田さんにとってミニシアターはどのような存在ですか?
違う次元に連れていってくれる場所です。なぜ人はミニシアターに行くのかと思うと、そこでしかかからない映画があるからだと思うんです。でも本当にそれだけかなというのもあるんです。というのも、小屋付きのお客さんというのもいて、そこでかかるんだったらなんでもいいからその小屋に行きたいというお客さんがいる。ということは、そこにちょっと次元が違う空間ができているんだろうなと思って。やっぱり、その空間と作品のコラボというのもあるのが大きい魅力かと思います。
ー 小屋付きのファンがいるというのもご存知だから、本作の主人公の珠みたいな、ミニシアターを居場所と思ってくれる人の気持ちもわかるんですね?
すんなりと腑に落ちました。僕にとっても映画館というのは逃げ場でもあったんですけれど、今思い返してみると、あれだけさんざん学校をサボってまで一人で行っていたのに、何がかかっていたかはあまり覚えていなかったりするんです。それ以上に、佇まいを覚えているんです。ソファはこんな感じだっただとか、売店のおばちゃんはいつも本を読んでいただとか。上映が始まるまで座って待っていた時のことほど覚えていたりするんですよね。
ー 映画館のシーンは、大阪の第七藝術劇場で撮影したそうですが、ナナゲイは過去に舞台挨拶などで行ったことがあったのでしょうか?カウンターの後ろに立つと、また違うものですか?
舞台挨拶で行って、その合間に映画を観たりしていたと思います。カウンターの後ろに立つのは、ミニシアターの懐に入った感じがして良かったです。「ここが自分の行き場所なんだ」という感じは誰に説明されることもなく、ふぁーっと入り込んできました。
ー 追撮したシーンでは、新宿K’s cinemaの前での撮影もありましたが、K’sは何か思い出がありますか?
2004年にできてから、あれよあれよという間に存在感が大きくなっていって。それはやっぱり何はさておき、ラインアップだと思うんです。何をそこでかけるのかというのがしっかりしているからこそ、存在感が大きくなった映画館だと思うので、これから先も期待が大きいです。