中でも黒沢監督が感銘を受けたのが、主人公フキの「死」に対する向き合い方だった。「フキはいろいろな人の死に接するわけですが、決して悲しまないですよね。映画の冒頭からして『人は死ぬとなぜ悲しむのか』という疑問から始まっていて。さまざまな経験を経て最終的には『人が死んでも必ずしも悲しむ必要はないのだ』という、非常に強烈なメッセージを獲得するに至る。そういう物語なのかもしれないなと思いました」と指摘すると、「世の中には、人が死んで悲しいという物語が山のように溢れていて、うんざりしていたんですけど、その中でよくぞ人が死んで悲しくないという映画をつくってくれた。本当にそこは痛快で、拍手したい」と称賛する。

そしてそれは河合が演じた、フキと同じマンションの住人についても同じだった。劇中で彼女はフキに、誰にも話せずにいた秘密を打ち明けることとなる。「よくあるお芝居ですと、ここは最後に泣き崩れるんですけど、彼女は一切泣かないんですね。非常につらい苦しみであったことは分かるんですけど、フキが疑問に思ったように、別に悲しいわけじゃない。分かりやすく悲しい感情とは少し違うように見えたんです。あれは監督の指示ですか?俳優さんって隙あらば泣こうとするじゃないですか?」と冗談めかして、会場は大笑い。

その言葉に笑顔を見せた河合も「泣くというゴールではない設計図をもとにシーンを考えてました。早川さんは時間を取ってくださる方で、現場に入る前に一度お会いして、そのシーンについて考えるという機会をつくってくださった。そこではフキ役の鈴木唯ちゃんといたんですけど、3人で色々なトライをして、一緒に探していきました。その時は泣くという選択肢は出なかったんですけど、リハーサルではいろんな挑戦をしました」と振り返る

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