そのシーンで黒沢監督がユニークだと感じたところとして、女性の深刻な身の上話を聞いていたはずのフキが、途中で飽きたのか、ベランダの方に行ってしまうところだった。「フキは全然話を聞いてなくて。事実上、河合さんの独り言のようになって。自分の過去を、誰に向かってでもなくしゃべるわけです。あのお芝居は難しくなかったですか?」と質問。
河合も「思い返してみると、催眠術ごっこをしたい子がいて。それを受け入れて催眠術にかかったふりをしてあげる、というところからスタートして。なぜか分からないけど、途中で本当に、ほぼ催眠術にかかったような状態になって。自動的に自分の口から話が出てくるようなゾーンに入ってしまった。それでひとりでしゃべってたと思うんですけど、唯ちゃんが勝手にどこかに歩いて行っちゃうのもリハーサルの中で見つかったことでしたね」と振り返る。

その流れで「俳優さんにとって、ワンシーンだけのゲスト出演というのは楽なんですか?それともつらいものですか?」と質問する黒沢監督。それに対して「難しいですね」と返した河合は、「やっぱり自分の目が届く場所がそのワンシーンしかないので。あんまり見渡せない。結局自分の役と、自分が関わるシーンをより良くする、ということに一番重きを置くことになるので、それが難しいですね」と説明。
そこで「逆に言えば、そこさえやればあとはお任せ、といった自由もあるのでは?」という黒沢監督の指摘に、「そうですね。お邪魔する感覚でした。1日、よろしくお願いしますっていう感じ」と返した河合。黒沢監督も「何でも来いみたいな感じがあのシーンからも感じられて、すごくすがすがしかった」と振り返った。