さらに黒沢監督は、劇中に散りばめられたエピソードのおそろしさについて言及する。「友達の家で父親の浮気の証拠を、遊びを装ってわざと当ててみせて反応を見たり、父親の病室で、隣のベッドで寝ているおじいさんの手を握って孫のふりをしたり。友達の家に行ったら、そのお母さんがフキの靴下を汚そうにビニール袋に入れたり。入院したリリーさんが久しぶりに家に帰って、明かりをつけたら喪服がかかっているとか。どれもほとんどホラー映画のネタですよ。1つとして心温まるいい話がない。それをあえて『これって普通ですよね』と提示しているところがすごい」と指摘し、ドッと沸いた会場内。

それに対し早川監督は「怖がらせようと思って書いたわけではなく、単に自分が好きなんでしょうね」と返答しつつも、「そう言われると、ちょっと自分が心配になってきますね」と苦笑い。「この映画も、何の事前情報も知らずに来ると、心温まる子どもの家族の話だと思うかもしれない。でも自分としてはこれが割と普通の感覚で。みんな多かれ少なかれこういう感じを持ってるんじゃないかなと思って入れたんですけどね」と振り返ると、「普通の感動的な物語に素直に感動できない自分がいて。ひねくれているなと常に思っていました」とコメント。黒沢監督も「少数派同士、がんばりましょう!」と笑ってみせた。

そしてフキと自分自身を重ね合わせて見ていたという河合も「わたしもたぶん早川さんと同じ感覚を共有している部分があるなと思いながら観ていました。やはりやってはいけないことをやりたくなったり、いい結果にならないと思っても手を出してしまう気持ちはすごく分かります。その結果悪いことが起きても、言葉にはできない。それは子どもだからだし、わたしは大人になっても全然言葉にできない。自分の中でも言葉にできないことがそのまま映像に残っていたのが好きでした」と深く共鳴している様子だった。