続いて、それぞれが演じたキャラクターや役作りについての話題へ。本作で俊樹という役を演じる上で、映画では描かれていない家族や兄妹のバックボーンなども考えて準備を重ねたという鈴木。「良い脚本には役の本音は書かれていないんです。役作りの時は、その裏にどんな気持ちがあるかを大事に考えています。俊樹は幼い頃に両親が亡くなってしまった原因について考えて、乗り越えてきたんじゃないかと思います。そして一番こだわったのは、映画の中で描かれていないフミ子の思春期について、すごく大変だったという設定を想定していました。色んなことを経てきた二人の歴史が見えてくるといいなと思いながら取り組んでいました。」とバックボーンを想像しながら役を作り上げたことを明かした。鈴木が考えていたフミ子の思春期時代の設定を今知ったという有村に対して、鈴木は「本人は思春期が大変だったことを気づいていないので、ちょうどいいんです」とフミ子側の立場でコメントした。

有村の演じたフミ子は“別の人の記憶を持つ”というキャラクターで、生まれ変わりとも少し違う、かなり難しい役どころ。演じる上で大切にしたことについて、有村は「フミ子にとってその存在が恐怖心なのかというところから紐解いていきました。フミ子にとってどうなのかを自問自答しながら、別の女性の存在を共存していく感覚で台本を読み進めていました。」とフミ子の複雑な役作りについて振り返った。さらに兄・俊樹との関係性について「私も姉がいて妹の立場ですが、異性の兄妹だと関係性が違うと思いました。ベタベタはしない、お互いの悩みや相談事はしないドライな距離感が心地よくて、でも根底には感謝の気持ちがあるので、ラストシーンに繋がっていくのだと想像していました。」と語った。

改めて、兄妹役として共演したことを聞かれると鈴木は「心からよかったな、幸運だったなと思います。」と笑顔で回答し、有村は「私は『阪急電車』という映画がデビュー作で、一緒のシーンはありませんが亮平さんとその作品に出演していました。それから約15年を経てから関西が舞台の映画でご一緒できて縁を感じました。地元のお兄ちゃんのような親近感を持って自分も現場に立つことができました。亮平さんとご一緒で良かったです。」と互いに共演できたことへの感謝を伝えた。

鈴鹿の演じた太郎は、カラスと話ができるという役柄。役作りの一環としてカラスのぬいぐるみを常に身に置いていたという鈴鹿は、「衣装合わせの時に小さいカラスのぬいぐるみが置いてあって、ずっと机の上にカラスがいる状態で過ごしていたので、目は慣れたと思います。実際のカラスは生地というか、質感が全然違っていて緊張がありました。」と語り、実際のカラスを触ると「生地感」は堅かったという鈴鹿に、鈴木がツッコミを入れて笑いが起きていた。さらに、実際にカラスと会話できる人がいるというエピソードを明かしつつ、鈴鹿は撮影中「カラスに“カァ”って言うとうなずいてくれた」と明かし、カラスと通じ合えていた気がすると自信を覗かせていた。

ウイカの演じた駒子は、俊樹とフミ子とは幼い頃からの付き合いという関係性で、原作には登場しない映画オリジナルのキャラクター。駒子の役作りについて、ウイカは「映画の中では思春期や子供から大人になる間は描かれていませんが、そこが人生で一番ターニングポイントが大きいと思います。その時期におそらく駒子みたいな子が絶対にいたであろうと着想を得たんだと思います。きっと駒子に感情移入してくれる人は多いと思います。役作りはそれほど取り組んでいませんが、衣装合わせの時に前田監督に「駒子やん!」と言っていただきました。」とすでに駒子そのものだったことを明かした。さらに、ウイカは「亮平さんがいつも関西弁で話しかけてくれて、昔からいた幼なじみのように接してくれました。現場全体が家族のような雰囲気で初日からやりやすくて、力のかかるシーンは一度もなかったです。」と現場の和やかな雰囲気を振り返っていた。

そして、本作で特に話題を集めているのが、フミ子の結婚式で披露する俊樹の感動的なスピーチシーン。鑑賞者からは、「思わず拍手してしまいそうなほど感動した」「自分もその場にいるような感覚で涙が溢れた」「私もあんなお兄ちゃんが欲しい!」といった絶賛の声が数多く届いている。そのスピーチの内容について、鈴木は「映画館で観てくださるお客さんが、映画が始まってから登場人物たちの人間関係をずっと見てきて、自分も参列者になってその場でフミ子と太郎の結婚式を見届ける時のことを考えてきました。俊樹がその場で思いついたことを話しているような感覚になってもらうにはどうしたらいいだろうと考えました。子供時代の撮影シーンを見ながら、ぬいぐるみに関するエピソードを聞いてアイデアを思いついて、亡くなった父が俊樹にどんな話をしたかという部分を取り入れながら、俊樹が感じてきたことを含めてスピーチの撮影日の数日前に完成しました。」と、監督やプロデューサーと相談しながら作り上げたことを熱意を込めて語った。

また、「自分の父が生きていたら妹の結婚式でどんなスピーチをしていたんだろう、というのを想像しながら内容を考えました。」と自身の家族に重ねながら大事なスピーチシーンを準備したのだという。その感動的なスピーチを現場で聞いた有村は「セリフではなく、兄やんの生きている声だと思いました。何度聞いても自然と鼻がつんとしたり、目頭が熱くなるような不思議な時間でした。」、有村の隣でスピーチを聞いていた鈴鹿は「兄やんの心の底からでてきた魂の言葉で、言葉から枝分かれしているものもあって、自分が見てきた色んな記憶が頭の中で再生されていきました。太郎としてもこの言葉を聞いて、より覚悟を決める思いがあったのではと思います。」と心に残る素敵なスピーチだったことをコメントしていた。

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