そんな塩野が本作で挑むのは、優しい夫の顔の裏に、妻に言えない秘密を抱えた男・高志。ギャンブルにのめり込み、会社の金300万円を横領。その事実が発覚し会社から解雇されたことも、闇金からの借金も、すべてを妻の和歌子(有村)に隠していた。そんな時、高志がパチンコ店でくも膜下出血により倒れ、それをきっかけに和歌子は高志が隠していた事実を全て知ることになる。

高志の入院費、滞納中の返済金、そして生活費――。追い詰められた和歌子が高志の銀行口座を確認すると、残高はわずか23円だった。主婦として家庭を守ってきた和歌子は絶望の淵に立たされ、他になすすべもなく【金の密輸】という闇バイトに手を染めていく・・・。その引き金を引いたのは、紛れもなく高志だ。一方で、高志は二人の子供にとっては父親であり、実母からは今でも溺愛される息子。身勝手で未熟だけれど、どこか憎みきれない。その高志の危ういバランスを塩野が絶妙に演じる。

本作のメガホンをとった天野監督は、高志という人物について、「高志は、人によって嫌なヤツに見えたり、正論を言うキャラクターに見えたりと、見え方に幅があるようですが、私からすると人間味があって面白い人。プライドが高いし本人は一生懸命やっているつもりなのに、言っていることとやっていることがズレているんですよね。」と、どこかズレているものの、単純な悪人ではないと高志の性格を明かす。さらに、そんな高志を演じた塩野に関しては、「役の面白さを引き出して、楽しんで演じてくださいました。」と、信頼を寄せた。