
今回、三度目のカンヌ国際映画祭の参加となったリリーは、「昨日、レッドカーペットを歩いている時、この映画そのものが出演しているような感覚がありました。映画『ルノワール』が温かく受け入れられ、評価されたことがとても嬉しかったです。皆で楽しくレッドカーペットを歩くことが出来たのも印象的です。この映画は、特定の国や文化を超えて、誰の心にも響くものがあると思います。登場人物の記憶や、子どもの頃の思い、もしくは後悔や自分自身の感情などいろいろな感覚を呼び起こしてくれます。私自身、この映画の大ファンとして、みんなと共にレッドカーペットを歩けたこと、そして多くの方に観ていただけたことをとても嬉しく思っています」と笑顔を見せ、手ごたえを感じていると振り返った。

海外のメディアから、劇中に“ルノワール”の絵画が登場することについて尋ねられると、「私が子どもの頃に、西洋美術の絵画がとても人気で、あらゆるところでレプリカが売られていました。偽物の絵画なのに、すごくゴージャスで、額縁に入れられていて。劇中にも出てくるイレーヌの少女の絵は、私も憧れて、父親にねだったという思い出があるんです。自分自身の子どもの時代と80年代後半の当時の日本の社会への郷愁もあり、そういった理由であの絵が登場します」と早川監督は理由を明かした。
また、ロケーションについての質問には、「80年代後半の町の面影のある場所を探していたところ、本作の撮影監督を務めている浦田秀穂さんから、ご自身の生まれ故郷である岐阜市を提案してもらいました。実際にロケハンで伺ってみたら、求めていた雰囲気があり、80年代の建物も残っていてとても美しい町並みだったんです。特に魅力的だったのは、長良川が流れていることです。とてもシネマティックでここしかないなと思い、岐阜で撮影することを決めました」と回答。
これは子どもの目線の映画なんだとはっきり意識するわけではないが、気付くとその目線に惹き込まされたというメディアは、カメラのアングルなどこだわった点について質問。カメラと被写体の距離感が重要だと考えたそうで、「被写に対して非常に近い距離ではあるのですが、決して近すぎない絶妙な距離を保つようにしています。また、カメラの奥行きも大切にしました。映像に深みを持たせることで、画面に映るものの意味や重要性が観客に自然と伝わるようにしたかったのです」と早川監督は答え、また、「この作品には説明的な要素があまりない為、観客が感じ取れるリズムも意識しました。私自身が好きな映画のリズムというものがあり、それをベースに構成しています」とこだわりを明かした。