世界最⼤規模のアニメーション映画祭として知られるアヌシー国際アニメーション映画祭。TVアニメ「オッドタクシー」で⼀躍話題となった⽊下監督が⻑編映画を⼿掛けるのは今回が初めて。昨年、制作中の作品をプレゼンテーションするWork in progress 部⾨での本作出品に続き、今年の⻑編コンペティション部⾨にて2度⽬のアヌシー国際アニメーション映画祭参加となる。1年ぶりの凱旋に、多くのファンが期待とともに作品を出迎えた。

ワールドプレミアとなる公式上映の会場は映画祭最⼤のスクリーンとなるボンリュー劇場。949席のチケットは受付開始とともに即完売し、当⽇券を求める⼈々が会場前に列を成す盛況振り。上映前にはステージへ作品の期待を込めて紙⾶⾏機を⾶ばすのが恒例だが、本作でもたくさんの紙⾶⾏機が数多く⾶ばされていた。

⽊下監督、松尾プロデューサーは本作の重要なキャラクターであるホウセンカのぬいぐるみとともに舞台へ登壇。会場に詰めかけた観客から⼤きな歓声と拍⼿で迎えられた。まずはじめに松尾プロデューサーが2022 年に『夏へのトンネル、さよならの出⼝』でもこのステージに⽴ったことに触れつつ、「『ホウセンカ』という作品は⽇本では企画が成⽴するのがなかなか難しい作品なんですけども、アヌシーで『夏へのトンネル〜』が賞を獲ったことが後押しになり実現できました。」と、感慨深く語り、「⽊下⻨監督のアイデアと脚本の此元和津也さんのストーリーテリングによって、とても⾒応えのある素敵な映画になったと思っていますので、皆さん楽しんでいってください。」と観客にメッセージを贈った。

松尾プロデューサーからマイクを受け取った⽊下監督は「Bonjour!(こんにちは)」と完璧な発⾳のフランス語で会場に挨拶。会場からも「Bonjour!」と返ってくると、今度は「Ça va?(元気?)」「oui(元気︕)」と、流れるようなコール&レスポンスに会場は⼤盛り上がり。⼤きな拍⼿に応えながら「本当は賢いんですけど、この後は⽇本語で喋りますね」と会場の笑いを誘った。⼀転、「今⽇は⾒に来てくれてありがとうございます」と観客への感謝を伝えながら「この作品は、美しさと純真さを⼤切にして作りました。美しさは⼈⽣を豊かにします。美しさは⽇常⽣活の⾝の回りに実はありふれています。しかし、我々は⾒過ごしてしまうことが多いんです。ただ、この映画はそこに向き合って、美しさとはなにか、純真さとはなにかを突き詰めて考えた作品です。これを⾒た⼈は今⽇はとてもいい気持ちになると思います。今晩、寝る前にまた思い出して欲しいのですが、今⽇はいい⽇だったな、と思うはずです。僕はその⾃信があります。」と映画に込めた思いを語り、出来栄えへの⾃信が垣間⾒えた。