11歳のソフィが父親とふたりきりで過ごした夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴る『aftersun/アフターサン』。2022年カンヌ国際映画祭・批評家週間での上映を皮切りに評判を呼び海外メディアが絶賛、A24が北米配給権を獲得した。カンヌを経て、アワードシーズンを迎えてもなお存在感を発揮した本作。長編映画2本目、当時26歳だった主演ポール・メスカルは、娘への深い愛情をみせる一方、自身の問題に苦悩する若い父親役としての繊細な演技で、第95回アカデミー賞主演男優賞へのノミネートを果たした。

メガホンを取ったのは、本作で長編映画デビューを飾ったスコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。本作でゴッサム・インディペンデント映画祭ブレイクスルー監督賞、英国アカデミー賞英国新人賞など数々の映画賞を獲得した、彗星のごとく映画業界に現れた逸材だ。本作の脚本も手掛け、彼女自身が経験した幼少時の父との思い出をしたためた。その瑞々しい感性で紡がれた物語に惚れ込んだのが、A24が初めて制作し第89回アカデミー賞で3冠に輝いた『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督だ。プロデューサーに名乗りを上げたジェンキンスは、「もう6回も観ているのに、毎回号泣しすぎて壊れそうなくらいだ。」と公開時メディアへのインタビューに答えている。

『mid90s ミッドナインティーズ』のジョナ・ヒルもまた、A24が才能を開花させた新人監督のひとり。それまで『40歳の童貞男』や『スーパーバッド 童貞ウォーズ』で売れっ子コメディ俳優として活躍する一方、『マネーボール』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど実力派としての側面も見せてきた名俳優だ。本作ではウェルズ監督同様脚本も手掛け、自身が90年代に体験した感情や記憶を基に3年の⽉⽇をかけて仕上げた。

舞台は90年代、LA。シングルマザーの家庭で育った13歳の少年スティーヴィーは力の強い兄に負けてばかりで、早く大きくなって見返してやりたいと願っていた。そんなある⽇、街のスケートボードショップに出入りする少年たちと知り合ったスティーヴィーは、驚くほど自由で格好良い彼らに憧れを抱き、近づこうとするが……。全編16mmフィルムで撮影された作中には、スーパー・ファミコンやカセットテープ、ストリート・ファイターなど1990年代を象徴するような懐かしいアイテムが盛り沢山。「スケートボーディングは私に友人を与えてくれました」とヒル監督が話すこの半自伝的な物語は、あらゆる世代の共感を呼び、ナショナル・ボード・オブ・レビューのトップ10インディペンデント映画に選出され、全米4館から1200スクリーン超まで拡大するスマッシュヒットを記録した。

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