早速、客席から「本作は、YMOの楽曲「RYDEEN」が流れるダンスシーンなど、印象的なシーンが多々ある中で、なぜ『ルノワール』というタイトルにしたのですか?」と質問が飛び出すと、中島が「ルノワールではなく、RYDEEN にしても面白かったかもしれませんね」とすかさず返し、早川監督は「80年代の少女の話でありながら、ルノワールというタイトルにすることで、ギャップを生み出したかった。また、カンヌで出逢ったある記者から、この作品は印象派の絵画のように、ひとつひとつの点描(シーンの繋がり)が、最後に1つの画として浮かび上がってくるという感想をもらい、確かに言い得ている」と語った。

また、ある観客から「中島さんが演じた役は、“こいつは怪しいな”ということが十分過ぎる程伝わってきて、とても楽しませてもらいました。役についてどのように準備されたのですか」と質問が挙がると、その感想に共感した多数の観客から笑いが起こる一幕もあった。

早川監督が、御前崎の幼少期も含めてバックグラウンドを詳細に考え、撮影前に中島に伝えた事と明かすと、「フキのお母さんを魅了する役だから、子供であるフキのことも魅了しなきゃと思いながら演じました」と中島。劇中で御前崎は、コミュニケーションに問題を抱える人々の為にセミナーを開く講師という設定なのだが、中島は 「実際にセミナーを開催している方にもお会いして、その時の優しそうな話し方、受講者との距離感から、インスピレーションを得ました」と話し、「御前崎の奥さんの派手な服装、奥さんと一緒にいる時の御前崎が車の運転席ではなくて、助手席にぽつんと座っていることから、彼がどんな男だか分かりますよね。それだけで彼の人物像を伝えられることが面白い」と語り、観客と笑い合いながら、自身の登場シーンを振り返った。

本作は、80年代後半のオカルトブームの最盛期が舞台となっている。主人公フキが、おまじないやテレパシーに夢中になる姿に共感した観客から「スプーン曲げや、2000年に地球が滅びることを本気で信じていた、自分自身の小学校時代を思い出しながら鑑賞しました」と熱い感想があがると、劇中でフキが母親と御前崎の関係を心配し、二人の関係を断ち切ろうとする、おまじないのシーンの話題に。フキが唱え続ける呪文は、ラテン語から着想を得ており、直訳すると「クモよ、いなくなれ!」という意味を持つこと、監督が生み出したオリジナルの呪文であることなどが明かされ、今までの舞台挨拶では語られなかった、詳細なシーンの裏話が飛び出した。

ティーチインの終盤、早川監督は「この作品は、起承転結がはっきりしているわけではなくて、小さな出来事が次々と続いていく映画です。何かひとつでも、皆さんが忘れていた記憶や子供の頃の感覚が蘇る、そんな映画体験になれば良いなと思っています」と観客にメッセージを伝えた。

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