今作の始まりは、2023年公開の映画『#マンホール』(23)で脚本家・岡田道尚とギャガのプロデューサー・松下剛が組んだことがきっかけ。この作品に手応えを感じた二人は、さらに刺激的なオリジナル作品を作ろうと約束したという。岡田は新プロジェクトのためにさまざまなアイデアを出し、その中のひとつが、「生成AIに“完全犯罪”を作らせたらどうなるだろう」というものだった。主人公・初海航を演じたのは重岡大毅。本作の岡田も松下も航役のファーストチョイスは重岡だったと口を揃える。「僕は『宇宙を駆けるよだか』(18)で重岡くんとご一緒していたというのもあり、本作の脚本を 書いているときも航は彼をイメ-ジしていました」と岡田は明かす。また、松下も「航という役の要は“普通の人”なのに、同時にヒロイックであること。普通の人が普通じゃ選ばない道を選んでしまい引き返せない、当然居心地の悪さも感じているんです。重岡くんは、そんな難しいバランスを見事に体現してくれました」と敬意を表する。
オファーを受けた重岡は、「以前、別の作品でご一緒した方々から、またお声掛けいただけて嬉しかったです。その期待に応えたい、頑張ろうと思いました」と決意したという。脚本を読んだときの第一印象については、「生成AIに興味を持って脚本を読み始めたのですが、物語のクライマックスが個人的にすごく好きな展開だったんです。とてもおもしろい脚本だと思いました」と振り返る。しかし、実際に演じてみると「航の心情がわからなくて…大変だなと痛感しました」という。そして、重岡は「航のその時の気持ちを書き出して整理しようと考え、ノートにめちゃくちゃ書き込みました。なぜ、警察に通報できなかったのか?途中で立ち止まれるタイミングは沢山あったと思うんだけど・・・。とにかく、妹を守りたい一心だったんだろうなと思うと、大切なものを守りたい気持ちには共感する部分がありました」と演じる上で、気持ちの整理が必要だったと語る。
そんな重岡の役との向き合い方について岡田は、「重岡くんが役作りのために書き込んだノートをちょっと見せてもらいましたが、役と真摯に向き合う彼の姿勢にこの8年間で培った役者としての成長の軌跡が垣間見えました。僕が生んだ航という役のバトンを引き継いでくれただけでなく、彼にしかできない航を演じ切ってくれたことが何より嬉しかったです」と称賛を贈った。
本作で初タッグを組んだ近藤監督は、「重岡くんは、何が飛び出してくるかわからないというか、テイク毎にお芝居が違うんです。その瞬間瞬間で、まるでコントロールしていないかのようにいろんなパターンを出してくれる。それがすごく面白くて、これは撮り甲斐があるぞと思っていました」と、重岡の存在に大いに刺激を受けたことを明かす。重岡もまた近藤監督との撮影を振り返り、「監督は航の心情をロードマップにしてくださったので、揺れ動く感情づくりに役立たせてもらい、とてもありがたかったです。事前の準備段階の時点から、航という人物像を一緒に試行錯誤しながら作っていけたと思います」と感謝を伝える。