他にも、「今まで観た戦争映画はフィクションが多かったので、実話を基にしている作品を見て素晴らしいなと思いました」と語る男子中学生や、「木に逃げ込んで生き抜いたという新たな実話を知れて、勉強になりました」と元気に答える女子中学生、「僕は力が強くないし2年も隠れている自信がないです」と素直に自分ごととして捉える男子小学生など、それぞれの年齢なりの様々な感想が寄せられた。
中でも、平監督が「今日聞いた中で一番印象に残っている感想」と語ったのは、女子中学生のひとりが「戦争が終わったら、それでみんなハッピーになれると思っていたが、そうじゃなかった」と感想を述べたこと。「戦争は、起きてしまっただけで良くないことなんだということに、この映画を観て気付き、そのような感想を持ってくれたというのが嬉しかったです。戦争がいかに悲惨なものなのかということは、今まで語り尽くされてきたけれど、この作品が知るきっかけになって嬉しいと、今日改めて感じました」と感慨深げだった。
Q&Aが終わると、伊江島で生まれ育ったシンガーソングライターで、本作の主題歌を歌うAnlyから生徒たちに向けたメッセージ映像が上映された。「私のこれまでのキャリアは『木の上の軍隊』の主題歌を書くという使命に繋がっていたのだと思う」と、並々ならぬ想いで主題歌を書き下ろしたAnly。

「私は平和な伊江島で生まれ育ったのですが、この映画に関わるということで、私自身も“戦争のときはどんな気持ちだったのか”“どんな大変なことがあったのか”など色々なことを学びました。主題歌のタイトル『ニヌファブシ』というのは、沖縄の言葉で『北極星』という意味です。一年中、空に輝き続ける星のように、平和への想いを、私も揺るがない気持ちで、そして皆さんも揺るがない気持ちで心に持ってほしいという想いを込めてタイトルにしました。皆さんもこの映画を通して、“自分にとっての平和って何だろう”ということを考えてもらえたらと思います」と、撮影で使用された伊江島の大きなガジュマルの木の前から、熱いメッセージを寄せた。
平監督は以前インタビューで、「小学生の頃、おじいやおばあが学校に来て、戦争当時の話をしてくれたことを思い出しました。涙ながらに語ってくれたあの証言は、殺人事件の被害者であり、さらに言うなら加害者かもしれない。そういう人たちが、死ぬ気で勇気を振り絞って話してくれていたんだということに、改めて気づかされました」と語っていた。平監督は35歳と若く、戦争体験者ではないけれど、本作を鑑賞した小中学生たちにとって、その平監督と話したこの時間はきっと一生記憶に残るはず。イベントを終えた平監督も「戦争の語り部はいずれ居なくなってしまう。でも映画はいろいろな形で子供たちの目や耳に届くことができる。映画としてたくさんの人の心に残るものが作れるとすれば、語り部がこの先居なくなってしまっても、映画として語り継ぐことができる」と、本イベントを通して、監督自身も学んだ貴重な機会となったようだ。