そして、撮影も終盤を迎える頃、実際に木の上で生き抜いた山口さんと佐次田さんのご子息が伊江島を訪れ、堤と山田と対面。和やかな雰囲気ながらも、山田は「実話を基にした物語を演じる責任。改めて身が引き締まった」と語る。
数々の出会いと、沖縄のスタッフを中心とした制作陣に支えられながら、一足先に迎えた山田のクランクアップでは、涙ながらに「この映画を通して、生きた2人がたくさんの人に届くことを願います。そして上官が堤さんで本当によかったです」と声を詰まらせる様子が印象的だった。
撮影で使われたガジュマルの木の植樹の作業中、思わぬ出来事が起きる。伊江島の造園業の知念洋輝さんが一時的に木を植えるために土を掘っていたところ、戦没者とみられる約20人分の遺骨や遺品、旧日本軍のものとみられる装備品が見つかったのだ。伊江島での遺骨の発見は実に20年ぶりだったという。偶然とはいえ運命的な発見に平監督は「とても悲しい話ではあるけれど、映画があったから見つかったとも思う」とコメント。
沖縄でひと足先に公開されたワールドプレミアの観客の中には、その知念さん一家の姿も。知念さんは「(発掘された)現場を見ているので、他の人とは違った感動がありました」と語り、知念さんの妻も「(山田が演じる新兵の)安慶名の『帰りたい』と言うシーンを観て、出てきた遺骨の方々を思い出して、同じ気持ちだったんだろうなと…感動しました」と涙ながらに語った。

沖縄の制作陣が中心となって制作された史上初の「沖縄から発信される本格的沖縄戦映画」となる『木の上の軍隊』。沖縄戦の縮図とも言われる戦いが繰り広げられた伊江島で、実際に生い茂るガジュマルの樹上や、戦時下に使われたガマ(自然洞窟)での撮影、演出、照明、美術……、その一つひとつの工程にスタッフの熱い思いと魂が込められている。俳優としてのキャリアを積み重ねてきた堤も「これほどスタッフや地元(沖縄)の方たちに支えられてできた作品はないと思っています。そこに対する自信は満々です」と語るほど。平監督も「沖縄で生まれ育った僕が、この映画で初めて沖縄戦に本気で向き合いました」と、この作品への並々ならぬ思いを吐露している。
メイキングドキュメンタリー映像はこちら https://youtu.be/ZMA63sX4RYQ