一方、バカリズムは山田と古田が演じたシンドラーとベートーヴェンについて「二人とも完全に人間として何かが欠落している。古田さん演じるベートーヴェンは音楽の才能が無かったら最低な人間としか思えないし、山田さんが演じるシンドラーは爽やか好青年だけれど、時間が経つにつれて異常性が加速していく。でも、それは良いキモさでした」と絶賛。ノンフィクションである原作を「現代日本の中学生が想像したウィーン」という設定にしたのは、バカリズム脚本のオリジナルだが「そもそもドイツ人の話を日本人がやること自体間違っているので、いかにして観客の違和感をなくすかを考えた。劇中に登場するのは“日本の中学生が想像したウィーン”であり、学校内での知っている人たちで脳内キャスティングをしている、という設定にしました」と明かした。

この方法論に山田は「脚本を読んだ時に、これだったら日本人の僕らがやっても成立すると思った」、そして古田も「中学生が学内の人たちでキャスティングしている。その設定に“バカリちゃん、上手いじゃないの!”と思った」と膝を打ちながら納得したという。撮影は全編を日本で行い、ウィーンの風景は大型LEDディスプレイに背景3DCGを表示する最新技術を使用している本作。ロケハンで実際にウィーンに行った関監督が「実際のウィーンで芝居をしている姿が想像できなかった」というと、バカリズムは「本物の場所に行ってしまうと、演じる人たちの“本物じゃない感”が際立つ。そこをどうするか監督と話し合いました。でも役者さんたちは誰も現地に行っていないのに、どうして関監督だけ行ったのか…ウィーンに行く必要があったんですか?」と直球の疑問を呈して笑いを誘っていた。
また会見では本予告と同時に、本作のメインテーマ曲が清塚信也氏が演奏した「ピアノ・ソナタ第23番 『熱情』第3楽章」であることも解禁された。関監督は「ベートーヴェンの『熱情』は人生の起伏を表している曲だったので、本作のメインテーマにするならばこれしかないと思った。清塚さんはパワフルな方なので、そのパワーと曲のパワーを掛け合わせたかった」と理由を述べて、バカリズムも「あの人もいい意味でイカれていますからね…」と清塚氏起用に納得していた。
またバカリズムは山田の演技について「山田さん演じるシンドラーが真っすぐな目をしている。シンドラーは異常な事をしているのに、間違ったことをしているとは思っていない。本当にオカシイ人ってこういう人のことを言うんだろうなと思った。山田さんはそんなシンドラーを見事に演じていて、憑依していた。だからキモイ。凄い方です」と大絶賛。古田も「や~まだは真面目で信じる力が強い俳優さん。今回のシンドラーも本当にキモい。信頼できる俳優さんです」と同調すると、山田は「今のお二人の言葉だけが太字で広がればいい…」と集まった報道陣に期待していた。

最後に主演の山田は「『この映画は事実である』とは言っていません。しかし史実に基づいたところから物語を作っているので、本作を観ていただいて今後皆さんがどのようにベートーヴェンを語るのか?それはベートーヴェンに限らず、人の事を語る時に何を本当として、何を嘘とするのか、そういったことを考え直す映画になっていると思います」と本作のメッセージを熱く語り、会見は終了した。
本予告はこちら https://youtu.be/_nkkKQe85nQ