また、印象的なシーンの話題になると、細⾕が「年齢を重ねて気づくことがたくさんあった。9年前とは違う感情が湧き上がった」として、改めて⼼を揺さぶられたのが、すずが終盤に周作に向けるあのセリフ――「ありがとう。この世界の⽚隅に、うちを⾒つけてくれて」だった。
「聞いた瞬間、ちょっと涙が⽌まらなくなっちゃって……」と声を詰まらせた細⾕は、「あの時代って、教育がガチガチだったと思うし、⼥性が今のように⼈⽣を⾃由に選べる環境ではなかったと思うんです。⾔われるがままお嫁に⾏って、流されるがままに⽣きて、それで戦争でも傷ついて、⼤切なものをなくして。それがあった後にあのラストシーンを⾒ると、“何が正しくて、どう⽣きるべきか”っていう混乱があったと思うんですけど、その中で確信を得た⾔葉――周作に出会えて、あの⾔葉を⾔うっていうのは、本当に尊いなと感じます」
⽚渕監督も「すずさんはそこで初めて、⾃分が住む場所と、これから歩んでいく道を⾒つけたという感じですよね」と静かに頷いた。「今もちょっとうるっときてるんですけど、思い出すとやばいですね」と語る細⾕の姿からは、時を経てなお作品に寄り添い続ける誠実な想いがにじんでいた。
