ー 山での撮影は、色々と配慮しなければならないところがあったと思いますが、どのような点に気を付けられましたか?

まずルールとして、登山をされている方の邪魔をしてはいけない。皆さん自分のリズムで登られているので、撮影を理由に制するなど邪魔をしないことが前提にあります。
そして、僕自身も含めて山という環境に慣れていないキャスト・スタッフの方も大勢いらっしゃるので、慣れない環境でケガや病気などにならないように気を配るのがプロデューサー陣と私の仕事だと思いました。座長の吉永小百合さんに対してもそうですし、吉永さん自身にもそういう気持ちで臨んでいただいたと思います。
機材の運搬に関してはブルドーザーで運ぶという方法もあったのですが、カメラなどの精密機材が振動に耐えられない可能性も考慮し、結局スタッフが背負って運搬しました。機材と共に山小屋に宿泊するスタッフは風呂無しの環境で過酷だったと思います。閉山後の富士山は気温もぐんと下がるので、全員登れるかというより、全員無事に下山出来るかということに気を配りました。下りるときの方が油断しがちなので。また、富士山撮影に参加する人たちは、低酸素室での高度順応テストを受けて臨みました。高山病になったときの呼吸法なども学んだ上での撮影でしたね。

ー 脚本は坂口理子さんが手がけられていますが、原案のある作品で気を付けられた点はありますか?

坂口さんはご夫婦で登山家なので、専門用語など教えていただく部分も多くありました。田部井淳子さんの人生を2時間に収めるということで、ご本人の直筆資料なども踏まえて、女性世界初のエベレスト登頂という偉業だけでなく、その背後にあった苦悩や軋轢も描こうと決めましたが、実在する人の話なので、誰も傷つけることのない様にもしたい。そういうことを相談しながら作り上げていきました。

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