今回の発表に合わせ本特集のポスタービジュアルと予告編も解禁!

また監督からのコメントと本特集上映開催にあたり批評家の蓮實重彦さんらよりコメントが到着。
<平⽥雄⼰監督 コメント>
このたび、⼤学院時代に制作した作品を、より多くの⽅にご覧いただける機会をいただき、⼤変光栄に思います。
おそろしい速さで社会が移り変わり、フィクションと現実の境界が曖昧になっていくなかで、映画には何ができるのか。もしかすると、そのどちらも描き出せることが、映画の魅⼒なのかもしれない。そんなことを考えながら、取り組んだ作品です。
まったくジャンルの異なる2作品ですが、どちらにも、この不確かな世界で、それでも何かを信じようとする⼈々の姿が映っています。ご覧になった⽅々の中にも、何か共鳴するものがあれば嬉しいです。
<蓮實重彦 コメント>
ふと⽬にした『ピクニック』のショットの連鎖に強く惹かれた。厳密なのに緩やかだ。緩やかなのに厳密である。
『ロスト・イン・イメージズ』も、撮れている。平⽥雄⼰はまぎれもなく未来の映画作家だ。
<塩⽥明彦 コメント>
マホガニーに囲まれた探偵事務所に瞳に光のない⼥が現れ、失踪者の捜査を依頼する。案の定、事件は錯綜していくのだが、これは映画内映画の話で、実はこの映画の出資サイドは⼥優を変え、新たな映画を創ろうとしている。
これに猛反発する監督だが、瞳に光のない⼥優がどこかへ失踪し、新たな謎が、彼の私⽣活を覆い始める。イメージは増殖し、謎もまた増殖していく。そうこうするうち突如、天地の軸と⽔平の軸が交錯し、突発的で同時多発的なアクションが画⾯の上を駆け抜けていく。映画とはなによりもまず“活劇”なのだと知る者のみに可能な、⾒事な映画的瞬間がそこにある。
<諏訪敦彦 コメント>
「フィルム・ノワール」という失われたジャンルを映画化するために、映画を作るというメタフィクションを導⼊することで虚構と現実の対⽴が仕組まれるが、現実の物語もまた虚実を往復する⼥の謎の疾⾛によってフィルム・ノワールと化してゆき⼆つの世界は相互に侵⾷してゆく。その外側にさらに国家的な陰謀を進⾏させることで世界を調停させようとするが、それもまた虚構の内部に織り込まれてしまうことに変わりはない。⾃ら仕掛けた⼆重三重の罠に⾃分で嵌まり込むかのように物語は錯綜し、出⼝などないように思えるが、その混沌に⾝を呈する決意によって映画は冒頭に現れる⼦ども=⾃然という圧倒的な他者との回路を模索する。このような挑戦をした映画が他にあるだろうか。
<筒井武⽂ コメント>
平⽥雄⼰の『ロスト・イン・イメージズ』は、失踪した夫の探索を依頼される探偵という、陰影を強調したフィルム・ノワールとして始まるが、主演⼥優の失踪で物語が中断し、⼥優を探して撮影を再開しようとする監督とシナリオを変更しようとするプロデューサーの対⽴の物語になっていく。しかし、そこでも不条理な陰謀の世界が展開され、作る主体が解体されていく。フィクションは宙吊りされ、時間が消滅していくような映画体験をもたらすのである。