本作のメガホンをとったのは、ドキュメンタリーの名手として名高い豊島圭介監督。2020年公開の『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』では、稀代の天才作家・三島由紀夫の内面と生き様に迫り、第30回日本映画プロフェッショナル大賞特別賞を受賞するなど、批評家から絶賛を浴びた。その確かな演出力は、大学在学中の「ぴあフィルムフェスティバル94」入選、そして本場ロサンゼルスのアメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)への留学経験によって培われたものだ。

大森を主演に迎えた映画『#真相をお話しします』(25)を経て、メンバーが最も信頼を寄せる豊島監督が、今度は「Mrs. GREEN APPLEの剥き出しの今」にカメラを向ける。この「被写体の内面に鋭く迫る」卓越した洞察力は、本作においても遺憾なく発揮されている。大森による“聖域”とも言える作曲シーン、そしてメンバー3人がカメラの前で明かす率直な胸の内は、本作の大きなハイライトと言えるだろう。特に、これまで一切明かされることのなかった作曲シーンの撮影が実現したのも、豊島監督への絶大な信頼があってこそだ。大森は「監督が豊島さんだというのもありますし、チームが知っている人たちだったので、『曲書くよ』というのも気軽に連絡できた。初対面のチームだったら絶対に受けなかったでしょうね」と明かしており、豊島監督だからこそ捉えられた映像であることは間違いない。

本作の制作にあたり豊島は、「『日本で今一番売れているバンドの曲が一体どうやって出来上がっているのか』という、誰もが興味を持つ秘密を間近で目撃できたことが非常に面白かった」と明かす。また、映像に収められるかどうかも未知数だった作曲シーンについては「正確にいうと、元貴君が<撮らせた>っていうことなんですけれど。撮らせてもいいと思ったわけだから、我々がいた意味がある」「あの映像は21分間あるんですけど、奇跡の21分っていうかね、あんなもの誰も見たことないわけです」と、その希少性を振り返っている。

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