本作の舞台となる1960年代と比べて、LGBTQ+をめぐる環境は変化を続けてきている。そんな中で「LGBTQ+当事者の監督、キャストによってつくられた本作が今後、どのような影響を及ぼすと思うか?」という質問も。それに対して、本作がシネコンやミニシアターなど、全国70館以上で公開される規模の商業映画でありながらも、当事者の手によってつくられた作品である、という本作の意義を強調した飯塚監督。「わたし自身、いち当事者として映画を観る時に、幼少期から映画の中に自分のロールモデルとなるような存在を探してきたんですが、その時にどうしても当事者性を感じられなかったり、表現の違和感というものをずっと感じていました。ですから今回の作品が当事者による表現の見本になる、というと大げさかもしれないですが、こういったつくり方があるよというような、ひとつの成功体験になればうれしいなと考えております」とコメント。さらに「そのためにはヒットしないと成功にならないので、ぜひ皆さんにもご支援していただきたいなと思っております」と呼びかけ会場の笑いを誘う一幕も。

また、本作の裁判シーンにおいて、主人公のサチが証言台に立ってまっすぐカメラに向かって証言しているところは、劇中に登場する裁判官をはじめとした人々に向けて話しているのと同時に、「実はスクリーンを見つめる観客に対しても語りかけていたのではないか?」という記者からの指摘も。その鋭いコメントに思わず笑顔を見せた中川は、「わたしはお芝居が初めてだったので、カメラを向けられるということがものすごく恐怖でした」と前置きしつつも、「でも脚本をいただいて、あのセリフを読ませていただいた時に、やはり自分と重なる部分がたくさんありました。あれはサチのセリフではありますが、中川未悠自身の言葉としてもしっかりと伝えたいと思いました。この映画が何かを変えるきっかけになると思っているので、もちろんカメラに向かって言っているんですが、スクリーンの向こうで観てくださっている方に向けて、わたしとサチの思いを投げかける、という気持ちで撮らせていただきました」と語った。

1 2

3

4 5

RELATED

PAGE TOP