さらに今後、LGBTQ+の人々が暮らしやすくなるために「どんな法律があれば良いと思うか?」という質問も。それにはまず飯塚監督が「法律が新たに生まれるというよりも、今、わたし自身が問題点として思っているのが、性同一性障害の特例法です。これは肉体の一部を変えないと戸籍が変更できないというような要項になっているのですが、この点に関しては、いち個人としても、なるべく早く改善をしてもらいたいと思っています」と返答。続く中川も「わたしの場合は、自分の体に男性器があるということが違和感だったので。性別適合手術をして戸籍を変えるところまでしているんですが、それはあくまで個人のアイデンティティなので。手術をしなくてもいいという方もいらっしゃいますし、個人の意見を尊重した法律というか、決め事ができたらいいなと思います。もちろん身体を変えたくても、持病があったり、何らかの理由で性別を変えられないという方々もいらっしゃるので。そうした方々にも寄り添うような形の法律ができれば、皆さんがより良く過ごしやすくなるんじゃないかなと思っております」。
中川は「今後も俳優業を続けていきたいと思いますか?」と問われると、「わたしはこの作品を通じてお芝居の難しさや楽しさに気づいたので、今後も続けていきたいと思います。性的マイノリティの方々はコメデイのように扱われていたり、笑いと捉えられてしまう事もあるので、わたし自身が俳優業を続けてることによって誰かの光になれたらいいなと思いますし、そういった悩みを抱えている方々から目指そうと思ってもらえて世の中も変わっていったら良いと思います。」と答えた。
本作の裁判シーンでは、裁判官がサチに「あなたは幸せですか?」と問いかけるシーンがある。そこでなんと答えたのかは、映画を観ていただきたいところだが、そのセリフに込めた意味を質問された飯塚監督は、「この一言のために映画を作ったと言っても過言ではありません」と力強く語り、「わたし自身、女性として生を受けて。とにかく必死に生きやすい環境を求めて男性に移行しました。しかしその結果、今度は男性という鎧を着なければならず、苦しみましたし、さらにトランスジェンダーらしさという規範にも苦しみました。結局、自分はどこに着地すれば幸せになれるのか、という疑問を抱えて今も生きています。その中で見つけた答えは、僕自身の幸せは、僕自身のものでしかないということ。それは一般的に思う幸せとは少し違った形かもしれない。でも幸せです。そのメッセージを伝えたくてこの映画をつくりました」。一方、このセリフについて中川は「あの言葉を聞いた時、きっと皆さんひとりひとりが『幸せって何なんだろう』と考えさせられたと思うんです」と切り出すと、「その答えはわたしにもまだ見つかっていません。きっと幸せは人それぞれで、だからこそ個性や自分らしさがあると思うんです。あのセリフに明確な答えはないかもしれませんが、皆さんの心に寄り添ってくれる質問だと思います」とコメント。その上で「もし今、幸せですか? と聞かれたとしたら、『ブルーボーイ事件』を皆さんに見ていただけることが、私の幸せです!」とにこやかに会場に呼びかけた。
