本作でダメな兄を演じたオダギリは、以前に中野監督と組んだ『湯を沸かすほどの熱い愛』でもダメな父を演じていた。そんなオダギリのキャスティングについて中野監督は、「僕が知ってる中では“ミスターダメな人”を演じたら一番の人なので。オダギリさんしかいないなと思っていたんですよ」と明かし、会場は大笑い。その上で、「でもただダメなだけじゃなくて、最後に人間らしい温かさみたいなものを表現できる人はオダギリさんしかいない」と絶大な信頼を寄せている様子だった。

オダギリも、「監督から今回の役はオダギリさんにピッタリですよと言われて。どういう捉え方をされてるんだろうなと思いましたが」と笑いながらも、「自分自身もダメなところはいっぱいあるし。社会に適合できないタイプの人間であると自覚しているので。監督の思うことも納得はできるんですけどね。でもこういう役だからこそ、自分のダメな部分や、許されない部分を許してもらいたいなと思いながら演じさせてもらってます」と語ると、隣にいた味元を見やりながら「いやいや、彼にだってできますから」と冗談めかし、笑いを誘った。
兄の元妻・加奈子を演じた満島は、青山演じる娘・満里奈、味元演じる息子・良一との家族の空気感をつくるための空気づくりを行ったそうで、「(青山)姫乃ちゃんが初めてのお芝居だったので、身体がこわばっているように感じて。撮影前に『ちょっとハグしない?』と言って、2人で長い時間ハグをしたりしました」と明かす。青山は「ママって呼んでいいですか?」「タメ口で話してもいいですか?」と撮影前に満島に聞き、撮影期間中はずっと「ママ」と呼んでいたと明かした。一方、息子・良一役の味元とは、虫を通じてコミュニケーションを図ろうとしていたという。満島が「虫が好きかなと思って『ほら、虫だよ』と見せたら、『きゃー!』と逃げられて。すごい嫌いだったみたいで申し訳ないなと思いました」と笑いながら話すと、味元は「びっくりしました」と当時を振り返った。そんな味元が満島との距離が縮まったと感じた瞬間は、彼女が差し入れてくれたビスケットだった。「そのビスケットが僕も普段から食べてる好きなやつで。それを伝えた時の笑顔を見て、距離が縮まったなと思いました」と語る味元の姿に、会場も温かい雰囲気に包まれた。
