この度、11⽉13⽇と14⽇に⼀般試写会が開催され、13⽇は「アフターシネマカフェ」として、天野千尋監督、映画ソムリエの東紗友美、映画・⾳楽パーソナリティーの奥浜レイラによる本⾳炸裂のトークイベントと交流会が⾏われ、14⽇には婚活アドバイザーの植草美幸の登壇イベントが⾏われた。

アフターシネマカフェ オフィシャルイベント
東が鑑賞直後の率直な感想について「⾒終わったあと、⼼にあざが残るような映画でした。夫婦の喧嘩の場⾯も、ただの⾔い合いじゃなくて、“ああ、これあるある…”と胸の奥を突かれる瞬間ばかり。トイレットペーパーの“ないよ”の⾔い⽅ひとつで空気が変わるシーンとか、そういう細部のリアルさがすごく刺さる。たぶん誰にでも思い当たる節がある」と、SNSでも話題となった場⾯を挙げながら語った。奥浜も「距離が近い関係ほど“⾔ってはいけない⼀⾔”が分かってしまう。⼆⼈が積み重ねてきた年⽉の蓄積が2時間の中でしっかり表れていました」と、作品の⼈間描写に深く共感した。

さらに天野監督⾃⾝の経験に基づいて作品を制作されたそうで「出産を機に⼀度仕事から離れ、家事育児を担う期間は社会から取り残されたような孤独感があった」と述べる。その後、映画の現場に復帰した際には、今度は監督⾃⾝が外で⻑時間働く⽴場になり、家を任せた夫が、かつての⾃分と同じように “外で⾃由に働いていていいな” と羨ましそうに、少し恨めしそうな⽬で⾒ていたことに気づいたという。この体験が「⽴場が変われば感じ⽅もまったく変わる」という作品テーマの着想につながったと明かした。

また作品タイトルにも関わる“名字”の設定について、天野監督は「名字が変わることは、アイデンティティが揺らぐ経験でもある。佐藤さんと佐藤さんという同じ姓にしたことで、性別や役割ではなく、まずは⼆⼈をフラットに⾒られる関係性として描けると思った」と語った。

そして特に印象的なラストシーンで魅せるサチの表情について、奥浜は「最後の岸井さんの表情は私もしたことがあります。」と告⽩。「経験なされてないのに、あの顔になる岸井さんはすごいです。⾃分で踏ん切りつけたはずなんだけど、あの顔になるんです。いろんなものがないまぜになるあの感情をなんと⾔っていいかわかりません。」と激しく共感。天野は「脚本には悲しみの感情とは書いていなくて、悔しさなのか、懐かしさなのか、いろんな感情が込み上げてくるような表情で、岸井さんの演技が本当に素晴らしかった。また撮影時に⾵もすごい助けてくれました。ちょっと⻑めにカットを撮ってる時に、突然岸井さんの髪に⾵が吹いてきて、サチの感情の揺れ動きを表現しているようでした」と明かした。
