シアター・イメージフォーラムにて「伊藤高志 劇映画特集」を開催することが決定!
2000年代以降、視覚的な幻惑や日常の変容など、それまでに手掛けた実験映像作品のテーマやコンセプトを発展させながら、フィクションの実験に没頭してきた伊藤高志の初の劇映画特集。「映画における虚構とは? 語りとは?」それらは同時に映画の構造を主題にしたアート作品でもあります。海外でも評価の高い最新作『遠い声』をはじめ、初の長編作品『零へ』の他、全4作品を上映し、伊藤高志が生み出す幻想と幻視の物語世界にフォーカスする。
【上映作品】

『遠い声』<最新作> 2024年 53分
出演:郡谷奈穂、池末朱莉
音響:稲垣貴士、伊藤高志
この作品は二人の女性が登場する。分身のような二人はそれぞれが同じチェキカメラを持ち歩き、一人は異様な気配にレンズを向け、一人は黒のワンピースを様々な場所に吊るして撮影している。二人はその彷徨いの中でお互いの存在を探し求めているようにも見えるが声は届くことがない。日常的な時間・空間を超越して二人の行動を描くこと、見つめ合うという強い視線の交差はあるものの二人は決して触れ合うことができないという空虚感を描くことでこの世界の不確実性を描きたいと思った。最近の戦争や環境問題、AI に想像される狂気性といった、恐ろしい気配に満ちた時代になってきたという底知れぬ不安を背景に、現実と虚構の境目が不明瞭になってきた時代を私なりに表象してみた。

『零へ』 2021年 72分
出演:原田伸雄、高橋瑞乃、天津孔雀、松田美和子、久保瑞季、笹原侑里
音響:荒木優光、伊藤高志
映像はスクリーン上に強い存在感を描き出すと共に、それは単なる虚像さという不在感を思い知らす残酷なメディアである。映像が持つこの両義性こそに私は強く興味を抱く。今回の作品は「死」をテーマに映画を撮ろうとする女子大生、「死体」を捨てるために放浪する中年の女、「死の影」に怯える老人という死にまつわる3つの物語と、それらに出演したキャストのインタビューを交えた作品だが、虚実、生死、存在といった境界が溶解することで現れる不穏を強く描くことで、私たちが生きている世界は不確実性に満ちていることを暗示させたいと思った。

『最後の天使』 2014年 33分
出演:村上璃子、上川周作、大谷悠、松尾恵美、早川聡
音響:荒木優光
撮影協力:竹内彩夏、坂口和
人が人と出会い関係を生み出していくという劇映画の常識的な話法を踏襲しながら、1つの物語として収束していくのではなく、拡散し、混沌としたイメージの海へ放り投げ出されるような映画をめざした。2組のカップルの不穏な関係。彼女は私の妄想なのか、それとも私の方が彼女の妄想なのか、その境界は曖昧になり、存在に対する不安が次第に高まっていく。

『甘い生活』 2010年 23分
出演/寺田みさこ、原田衣織、吉田良子
音響:荒木優光
撮影協力:豊永丈尋、川村圭、野田真理子、村上唯
死に場所を探しているのか? ただひたすら街をさまよい歩く喪服を着た女の物語と、破壊的な行為に明け暮れる少女の物語が交錯し溶け合い混沌としていく様を描く。少女は女の悪夢なのか? または女の方が少女の妄想なのか? 夢と現実の境界、内面と外部世界の境界、生と死の境界、光と闇の境界、そんな境界と呼ばれるものが喪失することで生まれる不安定で希薄な存在感を描きたいと思った。
【会期】 2025年12月13日(土)〜/連日21:00〜
【会場】シアター・イメージフォーラム
【料金】一般:1,500円/大学・専門学生:1,400円(学生証の提示が必要)/シニア:(60歳以上)1,400円/会員:1,300円/障がい者割引:1,300円
配給:ダゲレオ出版
(C)伊藤高志