⼤森監督はなぜ⽥中に朗読を依頼したのだろうか。その問いかけに「坂本さんと深い関係にあった⼈たちと議論を重ねる中で、坂本さんの⽇記を読むという⾮常に難しい仕事を担えるのは⽥中泯さんしかいない。ということでオファーさせていただき、ご快諾いただいた」と振り返った⼤森監督。

⼀⽅、そのオファーを受けた⽥中は、「⽂学者や詩⼈が⼼境を綴った⽇記のようなのを僕も随分読んできました。坂本さんの⽇記というのは、⽇記を読む⼈や世界に対してペンを⾛らせていた気がしてしょうがない。今⽣きている私が、その⽂字を私の感覚で読む、上⼿に聞かせよう考えるのは違うなと思いました」と振り返り、「僕はダンサーなので、⾃分の体で踊って⼝に出していく。それが映画を観る⼈に声として伝わっていくということに、猛烈なプレッシャーを感じました」と、依頼を受けた時の⼼境を明かした。

また、⽇記で綴られている⾔葉について、「坂本さんが書いた“みかん”と、⾃分が捉える “みかん”とではどのぐらい違うのか⾃信がなかったんです。でも、いろんな環境を空想しながら⾃分の⼝から⾔葉を出してみる、ということをやりました。⾃分の踊りを総動員してその⾔葉を捉えていった気がしています。⼤変な出来事でした」と振り返った。

続けて、親交のあった坂本さんと⽣前交わした会話に⾔及。「⾃分たちが今、この世に⽣きているということから始まって、⼈間って⼀体何をしていくんだろうか、これからどうしていくんだろうとか。宇宙的世間話というか、“⽣き物”としての⼈間の未来ややってきたこと。そんな話ばかり何時間もダラダラとしていました」と述懐。さらに、「会話の続きは、彼が死んだから終わりというものではなく、これからずっと続けるものなんだと思います。それは僕の癖で、先輩たち、⼤好きだった⼈たち、残念ながら若くして死んでしまった⼈たちとの会話をずっと続けているつもりで⽣きています。それは恥ずかしい思いをしたくないという気持ちもあるし、⾒ていてほしいという気持ちもある。⼀緒に戦わなきゃいけないということも。特に坂本さんの場合はそれが強くあります」とその思いをせつせつと語った。

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