上白石の情感たっぷりな声で朗読されるおじいちゃんとおばあちゃんとの思い出は、温かみがたっぷり。おじいちゃんとおばあちゃんが天国へと旅立った後、修道院での暮らしについてしっとりと話す口調とのコントラストが絶妙で、ボクの2人への厚くて深い想いがしっかりと伝わってくる。さらに、ボクの家族であるおじいちゃん、おばあちゃん、馬のパカラ、猫のニャーゴといった各キャラクターを巧みに演じ分ける上白石の圧倒的な表現力が、物語への没入感をグッと高めていた。

物語の中盤、おじいちゃんとおばあちゃんがいる天国への興味が尽きないボクは、パカラと共に天国探しの旅へ。探し続けても見つからず、やがて夜となり疲れたボクは眠りにつくのだが、ボクの暗闇への恐怖心をかき立てるような音楽と、ボクがパカラに抱かれて眠るシーンでの柔らかな曲調が、ボクの心情を補完するかのようで印象的だった。物語の見せ場の一つでもある、ボクが天国のような世界を体感するシーンでは、軽妙なサウンドで幸福感や楽しさを演出。その後、ボクが自問自答していくシーンは本作のテーマが色濃く反映されており、静かながらも力強い上白石の語りと相まって、観客の心に深く強く訴えかけていく。

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