この度解禁されたのは、解体から30年以上経った今より一層人々の心を捉えて離さない“東洋の魔窟”九龍城砦への想いを監督・キャストが語ったインタビュー映像。
1993年に解体された九龍城砦は、現在の香港・九龍城地区に作られた城塞。歴史に翻弄され、いつしかどこの国の法も及ばない不管理地帯となり、本作でレイモンド・ラム演じるチャン・ロッグワンのような密入国者、移民が大量に住みつくようになり、0.026平方キロメートルの土地に密集した10-15階建てのビルを建て、スラム街を形成した。
人口密度は約190万人/km2と世界で最も高い地区で、畳1枚に3人が住んでいるという異常な場所に。もちろん違法建築のオンパレードで、住民たちはおもちゃのブロックを重ねるように増築に増築を重ねていった。無法地帯と化した九龍城砦では、犯罪が横行し、この地域を知っている者は決してここに近寄ろうとしなかったという。それも、九龍城砦の一面だったかもしれない。
しかしこの度解禁された映像で監督のソイ・チェンは「この作品を作った動機は城砦へのイメージを変えたいと考えたこと、売春・賭け事・薬物の無法地帯と言われるが、80年代はそうじゃなかった。大工場のようで人々の暮らす場所だった」という。そこでは貧しく行き場を失った人々が慎ましく肩を寄せ合い、助け合いながら生きる日本の古き良き下町社会のような人々の暮らしがあったという。金持ちにはなれなくても、懸命に働けば必ず食べて行けた。密入国者として九龍城砦に逃げ込むチャン・ロッグワンを演じた、レイモンド・ラムは「外の人間は城砦の表面しか知らない、九龍城砦の入り口には境界線があると思ってる」と述べている。