男たちが聞かない彼女の声を、カメラが静かに聞いている。
男たちが気に留めない彼女のこころを、カメラはつぶさに見つめていて、言葉にならぬほど小さな棘がわたしにも刺さった。

天野千尋(映画監督)

父とその友人とのキャンプの最中。
主人公の娘の感情がじわじわと変わっていく。
父と娘は確かに親子ではあるけれど、個と個だということをまざまざと感じさせる。親であって欲しい時に親でいてもらえないその瞬間は、身に覚えがある気がして胸がキュッとした。家族だからといって全てわかり合えるわけではない。こうして大人になり、家族という枠組から脱却して自分という個を確立していくんだろう。

井樫彩(映画監督)

人からの目線、誰かとの沈黙の時間、言葉を交わさずとも伝わり気づいてしまうことが散らばっている。
どんな大人よりも敏感に、静かに、周りを見ているサムの描かれ方が素晴らしかったです。

石田真澄(写真家)

17歳のサムは生理による不調を抱えながら、父とその友人と山へ登る。
ジェンダー差に潜む我慢と傲慢ーー
この傑作の穏やかさは、それらがいかに日常的なものであるかを僕らに静かに問いかけてくる。

大前粟生(小説家)

木々のこもれび、川のせせらぎ、鳥のさえずりの間を縫って、気づかぬうちに慎重に張られている緊張の糸。
誰もが知り得る静かな圧迫感と痛切な失望。
あそこまで冷たく響く「沈黙」を僕はあまり耳にしたことがない。すごい映画です。

奥山由之(映画監督・写真家)

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