
映画『か「」く「」し「」ご「」と「』が5月30日(金)より公開される。原作は、『君の膵臓をたべたい』『青くて痛くて脆い』の著者、住野よるの同名小説。
みんなには隠している、少しだけ特別なチカラ。5人の高校生それぞれの“かくしごと”が織りなす、もどかしくも切ない物語だ。
監督を務めるのは、『少女は卒業しない』で恋する少女たちを繊細に描き、長編映画監督デビューを果たした中川駿。そんな中川監督にお話を伺った。※記事内に映画のラストシーンに関する言及がございます。
【主演】京くん:奥平大兼、ミッキー:出口夏希
【出演】ヅカ:佐野晶哉(Aぇ! group) 、パラ:菊池日菜子、エル:早瀬憩
これは難易度が高いぞ
─ 初めて原作を読んだときの印象は?
映画化してみないか、という話をいただいて、監督としてどう映像にするかを考えながら読んだのですが、まず、難易度が高いなと。
行動とは裏腹に内面で色々考えている描写が非常に多くて、頭の中って映像に映らないので、それをどう表現しようかなと。モノローグだらけになるのも嫌なので、これは難易度が高いぞと思ったのが1つ。
あとは、5人が持っている特別なチカラをどう表現しようか、これはなかなかチャレンジだなと思ったのが最初の印象です。
ただ、ストーリーとしての軸は、10代の男女の、思春期ならではの複雑な感情や心理描写で、そこは過去作の『少女は卒業しない』とも近いところがあったので、すごくシンパシーを感じましたし、僕の感性で監督として力になれるかなと感じました。
それで、難しさは感じつつもチャレンジしてみたいと思ってお引き受けしたというのが、そもそもの始まりでした。
─ 脚本を書く際に意識したことは?
前回の『少女は卒業しない』は、原作が連作短編小説だったということもあり、かなり僕の創作が加わっていますが、今回のスタンスとしては、原作の魅力を映像の世界で活かすためにはどうすべきか、という姿勢で臨みました。自分の創作を差し込んで自分のメッセージに置き換えて、ということではなく、原作を忠実に映像化するというスタンスでした。
─ 2時間で原作の5章構成を描くのは難しかったのでは?
そうですね。原作は5章構成ですが、映画では4章構成にしています。プロデューサーチーム側の、ミッキーと京くんの恋愛を軸に作っていきたいという狙いもあったので。群像劇と2人の恋愛軸という、なかなか両立が難しい要素ではあったんですが、それが成立するように組み替えていったという感じです。
2人の恋愛軸からは離れないけれども、それぞれの悩みもしっかり描きたくて、原作の持つ魅力と映画化の狙いを両立させるのはだいぶ苦労したところではありましたね。

もはやタピオカは古い
─ 高校生の青春を描くために意識したことはありますか?
10代の若い子たちが実際に見て違和感のない、リアリティのあるものにしたいなと。僕はもういい歳なので、若い世代から見ておかしくないものにしたかったんです。そこのリアリティはかなり追求した部分ですね。
学生役を演じているキャストがちょうどまさに10~20代なので、彼らには「おかしいところや、こうしたい、というものがあったら積極的に取り入れてくから言ってほしい」と伝えていました。意見が出やすいように、現場をピリピリさせず、楽しくみんなが主体的に取り組めるような現場の空気感を作ることも意識していました。
─ 監督のイメージとのギャップはありましたか?
意外とまだそんなにギャップはなかった(笑)。なかったんですが、口調や、あとはオフのところで喋っている会話の内容は、どうしてもおじさんが書くとタピオカとかになっちゃうんですけれど、もはやタピオカは古いと(笑)。
なので、オフの会話はリアルな若い子たちが分かる話題に変えてもらいました。そういうところは勉強になりましたね
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