新進女優と次世代監督がタッグを組み、「不器用に、でも一生懸命“今”を生きるヒロインたち」をそれぞれの視点で映画化するプロジェクト、“(not) HEROINE movies”=ノットヒロインムービーズの第4弾作品『チャチャ』。監督をするのは、ドラマ「美しい彼」シリーズ、『劇場版 美しい彼〜eternal~』(23)で多くのファンの心をつかみ、『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』(23)、『恋を知らない僕たちは』(24)でピュアなラブストーリーに挑戦するなど、今注目を集めるクリエイター・酒井麻衣。
監督7年ぶりのオリジナル作品である今作で主人公・チャチャを演じるのは、映画『サマーフィルムにのって』(21)での熱演が高く評価され、数々の映画賞を受賞し、俳優として、映画、ドラマ、舞台等幅広いフィールドで唯一無二の存在感を発揮している伊藤万理華。そんなお二人に作品について語ってもらった。
会った瞬間、チャチャさんがいた
─ 今回、主演が伊藤さんになったきっかけをお聞かせください
酒井 オリジナル作品で、チャチャという野良猫みたいな女の子に焦点を当てて書いたのですが、そのときは当て書きではなくて、チャチャという女の子を想像しながら書いていました。この女の子を表現できる方に果たして出逢えるのか、というのは初め思っていました。
プロデューサーから伊藤万理華さんがとても合うと思うとお話を聞いて、面談という形で初めてお会いして。会った瞬間にチャチャさんがいらっしゃったので、もう「お願いします」という感じでした(笑)。伊藤さんの話す事もすごく面白かったですし、雰囲気がとてもチャチャさんでした。
─ その話はご存じでしたか?
伊藤 直接お聞きしたのは初めてです。酒井さんのオリジナル脚本を読ませていただいてすごく共感して。チャチャというタイトルもそうだし、どういうふうに映像化して、どんな格好をして誰が演じるんだろうなと気になっていました。本を読ませていただいた後に面談(オーディション?)をしていただいて。私はもう緊張しすぎて、何を話したかは覚えていません。
酒井 私も一目でチャチャさんだと思った衝撃が強すぎて、内容は詳しくは覚えてないです(笑)。面談の時は、伊藤さんもクリエイティブに色々作られる方なので、どんなふうに作っているんですか?とか、そういう話をしたと思います。
伊藤 確かにそういう話はしました。酒井さんが自分のようなジャンルの人間を知らないかなと思い、自分はこういう人間ですというのをお話しさせていただいて、とても刺激的でした。
酒井 もちろん存じてはいたんですけれど、伊藤さんを知れば知るほど、伊藤さんにぴったりというか、当て書きかもしれないと思うぐらいだなと。
伊藤 私もそう思ってしまうくらい、自分で言うのもあれですが「自分じゃん」という瞬間が多かったです。
─ 伊藤さんは作品に対してどういう印象をお持ちですか?
伊藤 まずチャチャというキャラクターがタイトルにもなるくらい、印象として軸になっています。イントロ部分でチャチャの印象が外から語られて、周りの人たちから煙たがられているのかうらやましいのか、会話に馴染めない。その空気感を察するみたいな体験は経験したことがあるなというか。
チャチャもファッションや振る舞い方が、周りの人からすると浮いて見える。それを自覚はしている。ただそれをやめてまで人に合わせたくはない、みたいな気持ちは、本当によくわかります。良い意味でも悪い意味でも、誰にも媚びないところがすごくわかるという印象です。
作品自体に関しては、チャチャという人物がいろんな目線で語られていて、その中で本人はどういうふうに思っているのかという、みんなが見えてないところをちゃんと深く掘り下げられている。『チャチャ』という映画は、一見するとすごく変わっていて、ビザール(風変わりな)みたいに言われているけれど、酒井さんとお話をしてこれは純愛なんだと。チャチャ目線での本当の純愛というのが、傍から見ると新鮮なのかなと。それが人じゃなくて、物目線でも語られたりする作品なので、最初の印象は絵本の世界みたいだなと思いました。