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坂下雄一郎 ─ どちらの選択も肯定する作品 ─

(C)2025「君の顔では泣けない」製作委員会

映画『君の顔では泣けない』が11月14日(金)から公開される。原作小説は君嶋彼方のデビュー作。

高校1年生の夏、坂平 陸と水村まなみの身体が入れ替わってしまう。必ず元に戻ると信じ、家族にも秘密にしてお互いの人生を生きるふたり。それから15年が経ち、結婚と出産も経験した陸は、突然まなみに「元に戻る方法がわかったかも」と告げられる――。

坂平 陸(外見は水村まなみ)を演じるのは、今年はドラマ「波うらやかに、めおと日和」での主演が大きな話題の芳根京子。水村まなみ(外見は坂平 陸)を演じるのは、King & PrinceのメンバーとしてCDデビューし、10月公開の映画『おーい、応為』では時代劇に初挑戦するなど俳優としてもチャレンジを続ける髙橋海人。初共演のふたりが ”入れ替わり” という難しい題材に取り組んだ。

出版元へプレゼンもしたという坂下雄一郎監督に、今作についてお話をうかがった。


─ 原作を読んだ際の印象を教えてください

原作のトーンからです。例えば、陸(外見は女性)が過剰に男性のふりをしてそれが笑いになるようなコメディは違うと感じました。

あとからいろいろ変わっているんですが、一番最初に連想したのは、『ビューティー・インサイド』(15)という映画でした。この作品は毎日姿が変わってしまう男性が主人公。性別も年齢も関係なく日々どんどん変わる状況で、女性と出会って好きになるという話です。コメディっぽくもなりそうな題材なんですが、とても大人しいタッチで描かれていて、多分こういう路線なんじゃないかなと思ったのが最初ですね。

─ 原作の世界観を守りつつ、映画ならではの表現を実現するために工夫した点はありますか?

わりと探り探りですね。最初から「こういう形にしよう」と決めたものに向かっていくというよりは、あまり関わったことのないジャンルだったので、やりながら発見していったという印象の方が強いです。

─ 原作を読んで「ここは絶対に映像化したい!」と思ったシーンはありますか?

シーンというよりは、原作を読んだときに感じた現代的な価値観や、精神性みたいなものを、原作を損なわずにどう表現したらいいかな、そこにたどり着くためにどうやって積み重ねたらいいのかなと考えていきました。

─ 映画のオリジナル要素として「戻る方法を見つけたかもしれない」という設定を加えた理由を教えてください

そもそもこの映画はどういう話なのかと考えたとき、それぞれの人生について、元に戻ったほうがいいのか、このままでいたほうがいいのかで葛藤する話だと思いました。

原作者の君嶋さんにお会いしたとき「最終的にプールに飛び込んだあとどうなるかって決めているんですか」と質問したら、「どちらでもいいと思っています」とおっしゃっていたんです。それを思い出して、一方は元に戻った方がいいという考え方、もう一方はこのままでいいんじゃないかという考え方を描くという構造にして、そこで生まれる葛藤を強調するために加えました。

(C)2025「君の顔では泣けない」製作委員会

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