やっぱり水原さんがいい
─ 水原希子さんも非常に重要な役でしたが、ご一緒してみていかがでしたか?
今回が初めてに近いんですが、CMで1日だけ撮影をしたことはありました。セリフを覚えるのも速いし、何でもやってくださるプロフェッショナルな人だなというのは覚えていましたが、数時間の現場だったので当時はそんなに深く話をする機会もなかったですね。
水原さんの直近の映画を観て、お芝居がすごく良いなと。あとは『ノルウェイの森』の彼女の存在感はずっと残っていました。女優さんとしてもすごく尊敬していますし、同時にある意味人間らしくのたうちまわって、いろんなことを悩んで苦しんで、きちっと大人として発言される方だと感じていて。そういう力のある方だったら、このまほろという役のアイデンティティ、自分の存在自体を疑って苦しんで悩んでいくという要になる役を理解して、役として手繰り寄せられるだろうなと思い、お手紙を書きました。
水原さんも脚本を読んで気に入ってくださって、ただどんなに脚本がいいと思ってくださっても、お互いお会いして違うな、ということもあるかもしれないので、お互いにこの人だなと思えたらやりましょうねという感じでお会いして。やっぱりまほろは水原さんがいいなと思って、水原さんもやりたいと言ってくださいました。出来上がったものを観ても、水原さんでなければできない役だったなと思います。
─ 永瀬正敏さんは今回スチールカメラマンとしてもクレジットされています。どういった経緯だったのでしょうか?
『赤い雪』の時は永瀬さんが主役でしたが、とても重い役で大変で、本当に休みがなかったんです。そんな中、久しぶりの撮休のときに、喫茶店で脚本を読んでいるさりげない時間を撮影してくれたり、雪に埋もれた私の写真を撮影してくれたり、永瀬さんなりのスケッチのように写真を撮ってくれていたんですよね。映画の公開時にその写真を「何にでも使っていいですよ」と言ってくださって。ノベルティにさせていただいたんですが、そのときの写真がすごく素敵だったんです。
俳優としては、何もわざとらしいことはしないのに、空気がガラッと変わる、現れただけで空気が変容していくあの感じが唯一無二ですね。今回の役は、言葉はそんなに多くはないですが、いい人にも悪い人にも見えると思います。キャスティングが決まったあとに、前回の写真が素晴らしかったのでポスターを撮っていただけますかとご依頼をして、「もちろん喜んで」とおっしゃってくださった形ですね。
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