見たことのない世界に
─ 前作に引き続き撮影は高木風太さんですが、どのような印象をお持ちですか?
私は風太さんの構図が好きです。映画に対する考え方、向き合い方も好きです。私は演出プランを脚本に書くタイプで。一般的な日本の脚本ではあまりないのですが、私の現場は予算も日数もないですし、書き込めることは全部書いて、私がどうしたいのかはまずは脚本で伝わるようにしようと思っています。
風太さんとは、お互いにどうしたいかを話せる、尊重し合える関係。今回も終わったあと「次はいつですか」って言ってくれたりしました。挑戦したいと思っていることも似ていて、私の大切にしていることをスッと理解して撮ってくださる方です。
─ 編集の山崎さんとロラン・セネシャルさんとはどのように作業分担されたのでしょうか?
大枠は山崎さんと一緒に編集をしました。この映画の骨子を作ったのは山崎さんだと思っています。でも、語り口、物語の紡ぎ方や編集の仕方というのはそこからまた色々あるじゃないですか。
まず山崎さんと1ヶ月くらい一緒に編集をして、その後フランスに私が行って、今度は山崎さんとロランをリモートで繋いで、お互いに意志疎通をしていただきました。そしてロランと私で、この映画をどうするか、ロランの提案をまず聞いて、3日くらい話をして。そこからロランに1回任せて、それに対してまたディスカッションをして詰めていきました。
─ 最後に、今作を観る方に何を感じてもらいたいですか?
未来の話ではありますが、おそらくそう遠くなく、絶対に地続きなんですよ。とてもリアリティをもって感じていただけると思います。自分と顔が全く同じ、自分が失った自分みたいな人と出会ったときに、本当に自分が搾取できるか、殺せるか。様々なことを突きつけてくる内容だと思います。
普通に肩肘張らずに楽しんでもいただける作品ですし、役者の芝居も多分見たことないものだと思います。私自身、映画が楽しいなと思うのは、見たことのない世界に連れてってくれて、翌日から何かが少しずつ変わっていく、そういった経験だと思うので、ぜひ映画館で楽しんでいただいて、いろんな議論ができたらいいなと思います。
甲斐さやか KAI SAYAKA
10代より舞台や映画の現場で助監督や美術を担当する傍ら、女子美術大学在学中、共同監督の『BORDER LINE』(00)、『pellet』(01) が Santafe ショートフィルムフェスティバル、オーバーハウゼン国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭などに選出。そして脚本・監督作の『オンディーヌの呪い』がスキップシティ国際Dシネマ映画祭「奨励賞」を受賞。初長編作品の『赤い雪 Red Snow』は、第14回JAJFF(Los Angeles Japan Film Festival)最優秀作品賞を受賞、数々の映画祭にて高評価を受ける。更に小説「シェルター」(別冊文藝春秋)を2020年に発表し、2023年には舞台『聖なる怪物』の脚本・演出も手がける。
『徒花-ADABANA-』
10月18日 (金) テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテ他 全国順次公開
出演:井浦 新、水原希子、三浦透子、甲田益也子、板谷由夏、原 日出子、斉藤由貴、永瀬正敏
脚本・監督:甲斐さやか
プロデューサー:布川 均、宮田公夫、ビックァン・トラン、赤澤賢司、上野弘之
撮影:高木風太
照明:後閑健太
編集:山崎 梓、ロラン・セネシャル
音楽プロデューサー:akiko
制作プロダクション:ROBOT、DISSIDENZ
配給・宣伝:NAKACHIKA PICTURES
(C)2024「徒花-ADABANA-」製作委員会/ DISSIDENZ