GACKTという生き方
─ GACKTさんへのオファーは監督も直談判したとのこと。実際にご一緒してみていかがでしたか?
すごく面白い人だなと。人間的に面白いし、優しさもあるし、もちろんスタッフに対するリスペクトもある。役を支配して「GACKTが乗るならそんなバイクじゃダメだよね」と、存在感で演出していくことができる人。そんなふうにいろんな現場で愛されているんじゃないかな。少なくとも僕らの現場では、こうやるともっとGACKTっぽくてかっこいい、という感じで、眠っている周りの感性を自分寄りに奮い立たせて、目覚めさせる存在でした。
それは彼のストイックさがそうさせるんだと思う。あの肉体を維持しているのは尋常じゃないよね。今作では歯を削ってきたし。たぶん自分の理想とする内面に対して厳しい人なんだと思う。隙を見せず、休んでいるときもGACKTとして休んでいてかっこいいんだよね。だらっとスイッチを切ってしまうと、あの存在感って生まれない。
最初はキャラを面白がられていたのかもしれないけれど、今は、彼でないと出せない「本物」になっている感じがする。ビジュアルを求められていたけれど、実はビジュアルが内面で、美学で、この人の生き方なんだと。だからGACKTらしさを加速させるだけでいいっていうね。しかも年齢とも戦いながら。俺には真似できないな(笑)。
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─ 再集結した『クローズ ZERO』シリーズのメンバーたちはいかがでしたか?
いろんな性格の人がいるけれど、やっぱり若い奴らを応援しているよね。自分たちも歩いてきた道だし、「俺こんなことできなかったな、初めての現場ですごいよ!」って。いいところを見つけ出す才能が、長く役者をやっていく中で磨かれるんだろうな。後輩たちに自分の持っていなかったいいところを見ている。逆に言うと嫉妬心なのかもしれないね。若いってだけで羨ましく思ったりするじゃない。演技を教えるというよりも、現場でのルールや人間関係の作り方とか、そういう口の聞き方はダメだよということを教えていた。
俳優として生きているやつらって、普通じゃないよね(笑)。よく続けてきたなと。売れて変わってしまう人たちもずいぶん見てきたけれど、僕らとやっているのは、売れても変わらない人たちが多いよ。
─ 最後に記事を読んでいる方にメッセージをお願いします
みんなが自分のいまに満足しているわけじゃないし、境遇が違うのは当たり前。それを楽しんで、自分で自分の楽しい生き方を探っていく、それしかないんだ、と俺自身は考えている。そういう想いも、作品の登場人物たちが表現してくれていると思う。
少なくとも全く同じ人は世の中に自分しかいなくて、全人類でひとり。だからそれは絶対光るはずなんだよね。楽しめるはずなんだよ。だから、自分を見つけてもらいたいし、自分を褒めてもらいたい。「いいじゃんこれで」と、楽になってもらえるといいな。今日より明日がちょっと楽になる、そんなふうに観てもらえたらと思っています。
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三池崇史 MIIKE TAKASHI
1960年生まれ、大阪府出身。
米国アカデミー会員。CAA所属。横浜放送映画専門学院(現・日本映画学校)で学び、1991年にビデオ作品で監督デビュー。『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』(95)が初の劇場映画となる。Vシネマ、劇場映画問わず数多くの作品を演出。『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(07)、『十三人の刺客』(10)でヴェネチア国際映画祭、『一命』(11)と『藁の楯 わらのたて』(13)でカンヌ国際映画祭と、それぞれコンペティション部門に選出され、海外でも高い評価を受けている。主な作品に『クローズZERO』シリーズ(07・09)、『ヤッターマン』(09)、『悪の教典』(12)、『土竜の唄』シリーズ(14・16・21)などがある。
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『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』
1月31日(金)全国ロードショー
出演:⽊下暖⽇、吉澤要⼈、篠⽥⿇⾥⼦、⼟屋アンナ、久遠 親、やべきょうすけ、⼀ノ瀬ワタル、加藤⼩夏、仲野 温、カルマ、中⼭翔貴、せーや、真⽥理希、⼤平修蔵、⽥中美久、⾦⼦ノブアキ、寺島 進、⾼橋克典、GACKT
監督:三池崇史
脚本:樹林 伸
音楽:遠藤浩二
原作:樹林 伸、YOAKE FILM
エグゼクティブプロデューサー:朝倉未来、溝口勇児
チーフプロデューサー:丹羽多聞アンドリウ
配給:ギャガ / YOAKE FILM
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