隣で応援してくれている
─ 監督がこの作品をスタートしたきっかけは?
酒井 チャチャみたいな女の子に興味があるということと、今、万理華さんがおっしゃっていましたけれど、いろんな視点がこの世界にはある。それぞれの人の都合があり、それぞれの人の見え方があるので、勘違いを巻き起こすこともありますし、思い込みにより良い方向にも悪い方向にもいく場合があるということを、描いてみたかったというか。その世界の中で、チャチャみたいな女の子がどう生きるのか。「あの子はどうせ(気に入られているから)いいよね」みたいなことを思われている子の、孤独と悲しみみたいなのを匂い立たせたかったという感じです。
─ 『ドライブ・マイ・カー』共同脚本の大江崇允さんが脚本協力で参加されていますが、脚本を制作するうえでどのようなやりとりがありましたか?
酒井 プロデューサーの皆さんから「酒井さんに書いてください」と言われたことがすごく嬉しくて。でも私は他の作品もやっていて、スケジュールに追われていて書き上げられる自信がないですと相談をして、お手伝いをしてくださる方が必要だという話になりました。私のことを理解していて、脚本の技術もある方はどなたかいないですかと質問をされて。いらっしゃるんですけれど、大江さんには頼みたくないんですと話しました(笑)。「恋のツキ」というドラマからご一緒して結構仲良くさせてもらっていて。よく深いところまでお話しするので、逆に知りすぎていて書きづらいかなと思っていたんです。
大江さんが私のクリエイティブの良さみたいなのを理解してくださって。こういう方がいいんじゃないか、こういうセリフの流れにしたいけれども、こういうことをチャチャが言ったら、どうしたらチャチャが困ると思う?こういうことがあったら困るんじゃないかとか、そんな相談に乗ってもらったり。護(まもる)というキャラクターは大江さんが生み出してくださった感じです。
─ 酒井監督の相談相手のような
酒井 そうかもしれないです。「頑張れ、頑張れ、書けるよ!」と隣で応援してくれている。大江さんに「イカだけのお寿司が食べたいです」と言って、イカのお寿司を買ってきていただいて。それで映画の中で、デザイン会社の社長がイカのお寿司を食べるというシーンを入れるみたいなこともありました。