酒井麻衣監督×伊藤万理華対談 ─ 絵本の世界に生きる映画『チャチャ』の魅力

夢が実現した主題歌

─ 伊藤さんと出会って生まれた要素はありますか？

酒井　ほとんど全部です。話のストーリーの筋書きというか、そういうのは脚本には書かれていますが、世界観や、ファッション、チャチャの絵とか仕草は、全部伊藤さんに影響されています。こういうのいいな、チャチャはこうするんだと発見して、撮影させてもらったという感じです。ファッションも伊藤さんの私服も混ざっていたり、イラストの色塗りも、線は別の方なんですけれど、色は塗ってもらい、現場でもたまに描いてくださってという感じでしたね。

─ 主題歌「おはようの唄」は伊藤さんが歌われて、作詞には伊藤さんと監督のお名前がありましたが、どんなふうに制作されましたか？

酒井　元々伊藤さんが歌うことは決まっていなくて。撮影が終わり、ポスター撮影の時に、そうだったらいいなというお話から本当に夢が実現したという形だったんです。伊藤さんもこの映画のためだったらやってみたいとおっしゃってくださり、歌詞は会議室で一緒に作りました。作詞家の方の元々の歌詞も取り入れさせてもらって。

伊藤　もう本当にみなさんの意見が結集されている感じです。映画をこの一曲で表したというか。主題歌に関しては誰になるんだろうと気になっていて。チャチャが歌った方がいいんじゃないのかなと思っていたから、監督から希望を出していただいて「あっ、じゃあやります！」と。

─ 最後に記事を読んでいる方にメッセージをお願いします

酒井　いろんな視点があって、今まで感じていたけれども、あえて言葉に出していない感情が、チャチャを通して映っていると思います。本当にコミカルで面白い映画だと思うのでぜひ観てください。

伊藤　チャチャを含めて、出てくるキャラクターたちがちゃんと人間らしくって。チャチャは特に距離を取られたり、孤立しがちな存在感を持ってはいるんですけれど。そのチャチャの目線になった時に、すごく人間らしく、真っ直ぐな純愛なんだということに気づける瞬間があると思うので、そこでチャチャに共感するところがあれば嬉しいです。それぞれのキャラクターに共感するところはあると思います。いろんな目線に立ち何回も見返して発見できる、おもちゃ箱みたいな映画になっています。

酒井麻衣　SAKAI MAI

1991年生まれ、長野県出身。
2017年『はらはらなのか。』で商業監督デビュー。「映像作家100人2020」に選出され、以後も数多くの映画・ドラマ・MVを手がける。代表作にドラマ「恋のツキ」（18）、「荒ぶる季節の乙女どもよ。」（20）、「明日、私は誰かのカノジョ」、MV なにわ男子「初心LOVE(うぶらぶ)」、優里『レオ』（22）、映画『劇場版美しい彼～eternal～』（23）、『恋を知らない僕たちは』（24）などがある。

伊藤万理華　ITO MARIKA

1996年生まれ、大阪府出身。
2011～17年、乃木坂46一期生メンバーとして活動。現在は、俳優としてドラマ・映画・舞台に出演する一方、PARCO展「伊藤万理華の脳内博覧会」（17）、「HOMESICK」（20）、「MARIKA ITO LIKE EXHIBITION LIKEA」（22）を開催するなど、クリエイターとしての才能を発揮。初主演映画『サマーフィルムにのって』（21）では、TAMA映画賞にて最優秀新進女優賞を受賞、第31回日本映画批評家大賞にて新人女優賞を受賞。主な出演作に、地上波連続ドラマ初主演を務めた「お耳に合いましたら。」（21）、「日常の絶景」（23）、「PORTAL X」、「燕は戻ってこない」、「パーセント」（24）など。映画『もっと超越した所へ。』、『そばかす』（22）、『女優は泣かない』（23）、待機作に11月15日公開『オアシス』、25年1月17日公開『港に灯がともる』がある。