蓋をしていたものが開いてしまう瞬間
─ 共演者のみなさんと現場で役について話すことはありましたか?
役柄について話すということはあまりなかったのですが。チャンソンさんは、現場でふとした合間に、ぼそっと「あぁ、悲しい、寂しい」と言って、ジェホンとして今どういう感情かというのを共有してくれていました。また監督が月菜は今どういう気持ちなのかというのを都度引き出してくださったので、それで現場が進んでいった感じはありました。
─ 特に印象に残ったシーンやセリフはありますか?
印象的なシーンはたくさんありますが、「私だって辛いんだよ」とよし君に言う場面があって、まさかあの月菜からその言葉が出るとは、と。やっぱり触れられないのは、それだけ苦しいんだなと。あのシーンはすごく切なかったですし、月菜がずっと蓋をしていたものが開いてしまう瞬間というのはとても印象的でしたね。
─ 感情を押し殺しながら演じている感覚はありましたか?
そうですね。実際に撮影に入ると、家中の物にラップが貼られていて、気の張った生活をしている。それでも愛情が勝って一緒にいることを選択したのは月菜なわけだから、「私だって辛いんだよ」という言葉は、本来は言ってはいけない言葉な気がするんです、それは自分の選択だから。
でもそれが出てしまうくらい苦しかったんだなというのは、あのラップだらけのよし君との家を見て、その生活を想像したらスッと出たというか。月菜の押し殺していた思いが溢れてしまったような感覚でした。

