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重森豊太郎 ─ 誰も届かないところへ ─

映画『フロントライン』が6月13日より絶賛上映中。

舞台は、日本で最初の新型コロナウイルス集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」。未知のウイルスに“最前線”で挑んだ人々をオリジナル脚本で描く、事実に基づく物語だ。

本作の撮影を担当したのは、KDDIのau三太郎シリーズや、ドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」(22)など、数々の作品の撮影を手がけてきた重森豊太郎。

映画『蘇りの血』(09)、『モンスターズクラブ』、『I’M FLASH!』(12)など豊田利晃監督作品の撮影を担当。関根光才監督作品『生きてるだけで、愛。』(18)では日本映画撮影監督協会三浦賞を受賞し、『マチネの終わりに』(19/西谷弘監督)、『愛に乱暴』(24/森ガキ侑大監督)など話題作に数多く携わっている。新作『フロントライン』の撮影について、重森氏にお話を伺った。


─ 今作のカメラに「ARRI ALEXA 65」を選んだ理由を教えてください

(C) 2025「フロントライン」製作委員会

まずパースペクティブが全然違うんですよ。カメラって視野角が限定されていて、それがフレーミングなのですが、このカメラは視野角が広い。ということは人間の目にけっこう近くなるんです。

まずテスト撮影で遠くから歩いてきてもらって、手前で人が立ち止まったとき、異常な高揚感がありました。監督と「わっ、これすごいね!」って(笑)。でも不思議なことに、撮り慣れてくるとそれが普通になってくるんです。「あれ?なんでこんなに普通なんだろう、これALEXA 65だよね?」みたいな感覚になってきて。パースペクティブが違うからといって、明らかな違いがあるのかと言うと、いつも感じるものではなく、すごい!と普通をいったりきたりするんですよね。

お金もかかっているので、他のカメラとの違いを毎カット出さなきゃいけないのかなとも考えましたが、そうではなくて、語っているのは物語だなと。見終わったときに、このパースペクティブのカメラで物語を語っているという違いが絶対に出るなと、途中から気づきました。

─ 今作の画角は?

今回はユニビジウムっていう、ヴィットリオ・ストラーロが開発した画角で、アスペクト比が2.00:1。最近は『バービー』や『ミッドサマー』などで使われています。ALEXA 65のセンサーサイズをフルで使うような、1番画力が出る画角なんです。

─ なぜユニビジウムを選んだのでしょうか?

ALEXA 65のセンサーサイズに対して、レンズのイメージサークルが広くないと周りがケラレるので、今回はPrime DNAという特殊なレンズを借りています。『ジョーカー』『パラサイト 半地下の家族』などの作品でも使用されているレンズです。

そのサイズのパワーを1番出す画角がユニビジウム。要するにレンズの周辺のボケ方も全部入って世界観がだいぶ変わるので、そこを目指したということです。

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