自作のドローンカメラで

─ 冒頭の、船内の長回しから船外へ出て行くシーンが非常に印象的でした。あのシーンはどのように撮影されたのでしょうか?
あのシーンはすごく大変だったんです。埠頭の波打ち際にハッチバックのところだけセットを建てて、そこにカメラを持って歩ける道を作り、ドローンにカメラを引っ掛けているんですよ。
実際には船はないので、どこまでリアルで撮るのかは議論しました。僕も関根監督も、基本的にはできるだけリアルでそこにCGを足していきたい。というのも、全部CGだと、自分たちも役者も何を撮っているのかわからないので。なるべくそのシチュエーションに近づけるためにセットを建てました。
ドローンもカメラと羽根が近いと危ないので、カメラを引っ掛ける位置を何度もテストしています。最初のうちは5mぐらい下げていたのですが、離れすぎていてカメラが振られてしまう。カメラが投げ出されてしまったら危ないので、調整をして最終的には2mに。そこにカメラを引っ掛けて、そのままドローンで遠く離れて行って、という形です。

─ ドローンにもALEXA 65を使用しているのでしょうか?
最初船内の廊下を走っているところはALEXA 65で撮影しているのですが、さすがにドローンに引っ掛けると保険がものすごく高くなってしまうので、船外はALEXA LFのカメラとThaliaのレンズで撮影しています。
冒頭映像はこちら https://youtu.be/LinX6ewIfds?si=obBGmr83fxbdLD9g
─ 今作ではローアングルのカットが多かった印象ですが、意識はされていますか?
カメラマンそれぞれだと思うんですが、自分は基本的に視線が低いんです。何でも下から見ている。でもそのことによって、人の立体感など、人を捉えるときに強く出るんですよ。今回も狙っていたわけではないのですが、ローアングルも結構あったかな。引き画に関しても、だいたいいつも地べたから撮りますね。
─ 手持ちで人物撮影する際に意識していることは?
いまどこをお客さんに見てもらいたいのか、そういうバランスで見ていきます。
屋上で小栗旬さんと桜井ユキさんが話しているシーンは、監督がワンカットでいきたいと言って。それなら固定でカメラを置くより、じわじわカメラが動いていた方がいいねとなったのですが、立ち位置が離れているから、カメラが寄っていったら2人がだんだんフレームの端にいってしまう。そのとき観客はどちらを見ているのか?といったことです。
桜井さんが話していたら、そちらにカメラを振っていって、なんとなくこの人のことを見てほしい、次は小栗さんの方を見てほしい、そういうフレーミングを細かくやっていく。センターから少しずれただけで、人はそれを見たり見なかったりするので。どこをどう見せたいのかを、フレームの中の情報量でコントロールしているということですね。

─ 小栗さんのところではフレア(画面に白っぽくぼやけた光の輪や明るい筋が現れる現象)が入っていましたね
そう。あれは増本プロデューサーがすごく嫌がって(笑)。当日のトラブルで急に撮影場所を変えることになり、違う場所を探しているうちに日が落ちてきてしまったんです。
時間的にフレアは避けられない状況だったので、カメラを動かして顔にフレアがかからないよう撮影しながら、日が落ちてくるな、二度とできないなこの芝居、などと考えていました。
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